この記事は2023年10月1日に掲載された情報となります。
「ゆめぴりか」ブランドを守り、その価値を更に高めるため、採種圃産種子による計画に沿った作付けや、稲わら搬出や秋すき込みによる環境負荷軽減への取り組みが重要です。
ホクレン米穀部 米穀総合課
計画に沿った作付けで、高品質で需要に見合った生産を
「ゆめぴりか」は、北海道を代表するブランド米です。全国のブランド米マーケットに切り込める極良食味米の品種として2008年に誕生。
全道の生産者やJA、関係団体で設立した「北海道米の新たなブランド形成協議会」(以下協議会)が中心となって、タンパク値の基準を設け高品質な米づくりに取り組んだり、全国的なプロモーションを実施したりして、ブランド確立に取り組んできました。しかし、今、そのブランド価値のが危惧されています。
ブランド米の需要には、一定の規模があります。「ゆめぴりか」も例外ではありません。近年、計画を大幅に上回る作付けが確認され、自家増殖や出所が不確かな種子の使用があると考えられています。
「ゆめぴりか」はとてもデリケートな品種です。タンパク基準を満たす高品質な米をつくるには、きめ細かな管理に加え栽培に適した圃場選びも欠かせません。
栽培に適さない圃場での作付けが増えれば品質が下がることや、需要を上回る供給による値崩れも懸念されます。そうなると消費者の信頼を失い、せっかく築き上げたブランドの崩壊につながってしまいます。
協議会の大関会長はいいます。
「ブランド確立のため、皆さんと一緒に高品質な米づくりなどに取り組んできました。しかし、その維持が心配される状況です。今までせっかく築いた『ゆめぴりか』のブランド力が下がれば、北海道米の他の品種にも悪影響が及びかねません。採種圃産の種子を使い、計画に沿った作付けでおいしいお米をつくり、みんなでブランドを守っていきましょう」
稲わら搬出や秋すき込みで 新たな付加価値創造へ
ブランドを守るだけではなく、ブランド価値を向上させることも大切です。協議会では、「ゆめぴりか」の価値向上の取り組みとして、稲わら搬出や秋すき込みを呼びかけています。
2021年に持続可能な食料生産体制構築へ「みどりの食料システム戦略」が国で策定されるなど、今後は環境にも配慮した米づくりが重要です。稲わらの搬出や秋すき込みは、温室効果が高いメタンガスの発生を春すき込みより抑えることができます。
それだけでなく、春すき込みでは稲わらの分解により窒素が取り込まれ初期生育に影響したり、稲わら由来窒素が生育後半に出て食味低下が懸念されたりするのに比べ、良質米の生産にもつながります。
協議会では、収穫後の稲わら搬出や秋すき込み実施率の目標を、2023年産は8割、2024年産では9割に定め、段階的に取り組み拡大を図っていくことにしています。
取り組みに役立つ情報として、稲わら搬出や秋すき込みしやすい圃場づくり、作業を行うメリットなどを生産者に向けアグリポートWebで発信するとともに、消費者へのPRとして、本年6月から道内の量販店において、「メタンガス1割削減達成」の商品POP表示を行い、「ゆめぴりか」の新たな付加価値創造に向け取り組んでいます。
以下の記事も併せてご覧ください。
<PART1>環境負荷軽減を目指した「ゆめぴりか」の取り組み→記事を読む
<PART2【上】>稲わら搬出・秋すき込みしやすい「乾いた圃場づくり」に向けて→記事を読む
<PART2【下】>稲わら搬出・秋すき込みしやすい「乾いた圃場づくり」に向けて →記事を読む