高品質な「ゆめぴりか」生産へ

PART1:環境負荷軽減を目指した「ゆめぴりか」の取り組み

キーワード:メタンガスゆめぴりか搬出環境秋すき込み

稲わらの搬出・秋すき込み等圃場のきめ細やかな管理

高品質な「ゆめぴりか」作りに適切な圃場管理は欠かせません。圃場の状態を知り、適した対策を継続することは、生産性を高めることにつながります。中でも収穫後の稲わらの適正処理と適切な水管理は品質を高めるだけでなく環境への負荷を軽減します。また、持続可能な食料システムの構築に向け「みどりの食料システム戦略」が策定されるなど、今後はブランド価値を高めるために、環境にも配慮した米作りが重要です。この記事では3回に分けて、環境に配慮した高品質な「ゆめぴりか」作りのポイントをお伝えします。

この記事は2023年8月10日に掲載された情報となります。

ホクレン米穀部 米穀総合課

水田における温室効果ガス発生の原理を知りましょう

国内における農林水産分野の温室効果ガス排出量を見ると、全体の3割弱を稲作が占めています(図1)。排出されるガスは、ほとんどがメタン(CH4)で二酸化炭素(CO2)と比べて、約25倍の温室効果があります。

国内の農林水産分野の温室効果ガス排出量
図1.国内の農林水産分野の温室効果ガス排出量(2019年度) 注:温室効果は、二酸化炭素に比べメタンで25倍、一酸化二窒素(N²O)では298倍。 出典:温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)(「農業分野における気候変動・地球温暖化対策について」2021年12月農林水産省)

田植え直後の土壌には酸素が豊富に含まれており、酸素があるところでは活動しないメタン生成菌※は、メタンを発生させません。しかし、その後、湛水した水田では酸素のない状態になり、稲わらなどの有機物をえさにしたメタン生成菌が、活発にメタンを発生させます(図2)。

※水田の土壌の中に潜む、メタンを作る微生物。
図2.メタンが水田で発生するしくみ
図2.メタンが水田で発生するしくみ(出典:農研機構)

稲わらの搬出・秋すき込みは温室効果ガス削減に有効です

温室効果ガス削減の具体的な取り組みとして、稲わらの搬出・秋すき込みが有効です。
春すき込みと比較すると、搬出の場合76%、秋すき込みの場合35%温室効果ガスを削減できることが分かっています(一般社団法人 北海道地域農業研究所調べ)(図3)。

温室効果ガス発生の春すき込みとの比較
図3.温室効果ガス発生の春すき込みとの比較

協議会が行った2021年産「ゆめぴりか」生産者への調査では、半数近くは春すき込みで、搬出は5‌%、秋すき込みは46%と、計51%の実施率でした。2022年産では、搬出・秋すき込み合わせて70%の目標実施率に対し、実際の実施率は69%(搬出13%、秋すき込み56%)と、目標をほぼ達成でき前対比で1割のメタン削減につながりました。
協議会では、更なるメタン削減を目指して、2023年産80%、2024年産90%と、段階的に目標値を高め、今後も搬出・秋すき込みを励行していきます(写真1)。

収穫後稲わら搬出秋鋤き込み励行チラシ
写真1..収穫後稲わら搬出秋鋤き込み励行チラシ

温室効果ガス削減に向けた取り組み

「北海道米の新たなブランド形成協議会」(以下:協議会)は、「ゆめぴりか」における良質米の生産と環境負荷軽減に繋がる取り組みとして、水田から発生する温室効果ガス(メタン)の削減に向け、収穫後の稲わらの「搬出」・「秋すき込み」について、年産別に取り組み目標を定め、励行しています(図4)。

収穫後稲わらの秋すき込み・搬出実施目標
図4.収穫後稲わらの秋すき込み・搬出実施目標

 

環境に配慮した米作りでブランドを向上させていきましょう

農業の生産性向上・持続性を両立した環境に配慮した農業を目指して、2021年5月に農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定しました。地球温暖化や大規模な自然災害など、さまざまな環境問題を背景に、2050年までに化学農薬・化学肥料の低減、有機農業の取り組み拡大、温室効果ガスの削減などの目標が掲げられました。農業生産現場だけでなく、消費者も環境への関心が高まっています。「おいしさ」だけでなく、「環境に配慮した生産を行っている」ということを、販売面の新たなブランド付加価値付与を目的に、POPによるPRを行っています。(図5)

ゆめぴりかのメタン削減をPRした店頭POP
図5.ゆめぴりかのメタン削減をPRした店頭POP
ブランドを守ることを呼びかけるタオルのデザイン
ブランドを守ることを呼びかけるタオルのデザイン

 

 

 

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アグリポートVOL39 「ゆめぴりか」栽培での温室効果ガス発生削減の取り組み>>