❶【米粉】

市場は今も拡大中 一等米を使った米粉づくり

キーワード:北海道米稲作米粉

市場は今も拡大中 一等米を使った米粉づくり

この記事は2023年10月1日に掲載された情報となります。

有限会社コントラクター旭川 専務取締役 板谷 芳男さん(左) 製粉加工課 課長 光澤 純平さん(右)

有限会社コントラクター旭川
専務取締役 板谷 芳男さん(左)
製粉加工課 課長 光澤 純平さん(右)

自分たちで生産したお米を自社工場で米粉に加工し、販売している有限会社コントラクター旭川。農作業の受託会社がなぜ米粉の製造を始めたのか。いきさつを教えてもらいました。

小売用商品(1㎏と500gがある) パッケージには「食卓のご飯と同等のお米を使用」と明記。ホクレンショップなどへの一般流通も増えています。
写真1.小売用商品(1㎏と500gがある)
パッケージには「食卓のご飯と同等のお米を使用」と明記。ホクレンショップなどへの一般流通も増えています。

きっかけは学校給食

1997年設立の「コントラクター旭川」が米粉の製造を始めたのは、旭川市で学校給食に米粉パンの導入を決めたことがきっかけでした。
国の補助金を活用し、大型製粉機を購入(写真2)。2010年の秋から米粉を製造し、給食パン用として月に6回、市内の小中学校へ提供しています。「もちもちしていておいしい」と評判は上々で、今では米粉のパンは給食の定番といえるまでになりました。

気流粉砕式製粉機
写真2.気流粉砕式製粉機。プロペラで風を起こし、米同士をぶつけて細かく砕き米粉を製造します。異物混入を防ぐため、工場は麦やそばと併用できません。

一等米使用の高品質

コントラクター旭川は社長・専務のほか従業員が14人。耕作者のいない土地を引き受け、大豆や麦、そば、米などを生産していますが、冬場の仕事は除雪が中心です。

「米粉の売り上げは会社にとって安定した運転資金になっています」と話すのは専務取締役の板谷芳男さん。原料の米もすべて自社生産。品質の高さが自慢です。「米粉というと古い米やクズ米を製粉したものというイメージがありますが、うちは全て一等米。主食用米と同等の品質です(写真3)」

原料米圃場 原料米は新規需要米として栽培している「きらら397」と「ゆめぴりか」。2013年からは直播を採用しています。
写真3.原料米圃場
原料米は新規需要米として栽培している「きらら397」と「ゆめぴりか」。2013年からは直播を採用しています。

 

「ゆめぴりか」を使った米粉
写真4.「ゆめぴりか」を使った米粉

フレッシュな米粉を出荷

工場で米粉づくりを担当するのは、製粉加工課の光澤純平さん。精米、製粉、品質検査、パッケージを一人で担当しています。

「当社の強みはJ‌Aの低温倉庫が隣にあること。玄米の状態で低温保存し、当日つくる分だけを精米して製粉するので、フレッシュな米粉を出荷できます」

学校給食用だけでなく大手製パン会社からの注文が入るようになると、工場はフル稼働に。昨年からは輸入小麦の供給を不安視する道外企業からも問い合わせが舞い込むようになりました。

とはいえ製造設備にも限界があり、現状は年間120tの製造が精一杯。近隣の町から「地元の米を学校給食に使いたい」という製粉依頼には協力を惜しみませんが、大手メーカーの大量注文には残念ながら応じきれない状況です。

米粉ならではの魅力を訴求

近は地元菓子店のシュークリームや、ご当地グルメのしょうゆ焼きそばの麺にも米粉が使われるようになりました。学校給食では米粉パンとは別に、おかずづくりにも米粉が活用されています。

「小麦粉の代替品ではなく、米粉ならではの良さが広まって、積極的に選ばれるようになってほしい」というのは光澤さん。米粉は油を吸いづらいため、天ぷら粉やからあげ粉に使うとカラッと揚がるのだそうです。

小麦粉に比べ吸水率が高いので、餃子の皮やお好み焼きもしっとりもちもち。ダマにならないので、ホワイトソースなどのとろみづけにも最適です。

少子化の影響で学校給食への供給量が減少していること、輸入小麦との価格差が大きいことなど、まだまだ課題はあるものの、将来は小麦アレルギーの人向けに輸出の可能性も考えられます。

「米粉の消費が増えれば、水張り面積を守ることにつながりますから」と板谷さん。地域の稲作を守りたいという強い思いが商品づくりの原動力です。

コントラクター旭川の米粉出荷量の推移
図1.コントラクター旭川の米粉出荷量の推移