高品質な「ゆめぴりか」作りに圃場の適切な管理は欠かせません。圃場の状態を知り、適した対策を継続することは、生産性を高めます。中でも収穫後の稲わらの適正処理と作期中の水管理は、「乾いた圃場づくり」につながり、かつ、環境にも大きな影響を与えます。この「乾いた圃場づくり」では、地力窒素の発現を促進させたり、土中に新鮮な水や酸素を供給したりと、根の張りに好影響を与え、品質の向上につながります。また、環境面では、持続可能な食料システムの構築に向け「みどりの食料システム戦略」が策定されるなど、今後はブランド価値を高めるために、環境にも配慮した米作りが重要です。この記事では2回に分けて、環境に配慮した高品質な「ゆめぴりか」作りのポイントをお伝えします。
この記事は2023年8月10日に掲載された情報となります。
北海道農政部 生産振興局技術普及課 主査 上田 朋法さん
圃場整備に有効な稲わらの搬出と秋すき込み
稲わらは土づくりにとって貴重な有機物資源ですが、春すき込みは土壌還元等による生育への悪影響が懸念されます。また、北海道は降雪や土壌により「圃場が乾きにくい」という問題がありますが、春まで圃場表面に放置された稲わらも圃場の乾きを妨げる一因となっています。
このため、収穫後に稲わらを搬出または秋すき込みに取り組んでいるゆめぴりか栽培農家が多数います(写真1)。
稲わらの秋すき込みは、比較的取り組みやすい効果的な技術対策で有機物を循環させ、地力を高めることにもつながります。
秋すき込みは以下のメリットがあります。
●春すき込みより稲わらの分解を進めることができます。
●乾田化対策を講じた圃場で秋すき込みを行うことで、土壌還元(ワキ)の軽減につながり、根圏域を健全化できます(写真2)。
●乾田化により地力窒素が発現します。これに稲わらの秋すき込みを実施することにより、施肥窒素の低減につなげることも可能です。
秋すき込みは、圃場が十分乾燥していることで効果が期待できる技術
秋すき込みしやすい圃場の条件は「乾きが良好なこと」です。そのためには、しっかり排水することが大切です。
●収穫後の圃場表面に滞水が見られる場合は、溝切り(写真3)を行います。溝切り機などで溝を掘り、落水口へつないで排水を促進します。
●排水がしっかりされているか、暗きょをチェックします(集中管理孔を有する圃場では暗きょ清掃を実施し保守管理します)(写真4)。
●圃場の排水性を高めるために、サブソイラーなどで心土破砕を行います(写真5)。
●圃場が乾いたら、通気性を確保するためにチゼル耕などで粗耕し、稲わらをすき込みます(写真6)。
●圃場の乾きが不十分な状態ですき込むと、土壌を練り潰し、透排水性の悪化につながります(写真7)。
秋すき込みができない場合の対応
春すき込みでは稲わらの分解が進まず、夏場の生育・収量・品質に悪影響を与え、高たんぱく化を招くことがあります。
稲わらが分解されないまま田植えを行うため、土壌中の酸素や窒素が不足し、ワキによる生育への悪影響や温室効果ガス(メタン)発生の原因にもつながります。
天候や作業スケジュールなどで秋すき込みができなかった場合は、以下の対策を行いましょう。
●収穫後の圃場に水が溜まっていないか確認。溜まっている水は溝きりで排水を促進します(写真8)。
●春は早い段階で融雪水を圃場外へ排水する(写真9)。
●作期外の圃場は「乾いた状態」を維持することを意識してください(写真10)。
天候などの影響でどうしても乾田化が進まないことがあります。
そんな時でも圃場の特性をしっかりと観察し、排水を促進する工夫をしましょう。
可能であれば搬出も検討しましょう
搬出後の稲わらの扱いや引き取り先など難しい面がありますが、稲わら搬出、堆肥化・還元は、適切な圃場管理の理想的な形となります(写真11)。