
この記事は2025年1月31日に掲載された情報となります。
カテゴリー:実証実験
実施年度:2023〜2024年度
実施:営農技術課
協力関係機関:ヤンマーグリーンシステム株式会社
POINT
●作物の蒸散に応じて自然給水されるため、煩雑な給液タイマー等の設定は不要。
●隔離床栽培でありながら排液が発生しないため、水、肥料共に大幅に削減し、環境負荷軽減。
隔離床養液栽培の課題
簡易隔離床栽培システムを始めとして、全道で隔離床養液栽培の普及が進んでいます。
この技術を導入することで、土壌病害や残留農薬の影響を受けずに栽培することが可能であり、また新規就農者にとっても栽培管理が容易という利点があります。
㆒方で導入した現地圃場で挙げられている課題としては、排液率に基づく給液管理を行う必要があるため、給液に用いる化学肥料や原水の無駄が大きいこと、排液処理の対応等があり、普及推進していく上で解決すべき問題となっています。
そこで主に排液量・化学肥料使用量低減のため、新しい隔離床養液栽培システムとしてヤンマーグリーンシステム株式会社が扱う底面かん水システム「NSP」の試験を行いました。
NSP(自然給水栽培装置)とは
NSP(自然給水栽培装置)とは、培地底面から給液を供給することにより、隔離床栽培でありながら排液が発生しないため、水、肥料共に大幅に削減することができる栽培システムです。
また、㆒般的なかん水装置では、天候や生育段階に応じて給水量をコントロールする必要がありますが、NSPでは作物の蒸散に応じて自然給水されるため、かん水時間等の煩雑な給液タイマー等の設定を行う必要がなく省力的で、給液を管理する労働時間の削減につながります。
また新規就農者でも安定した品質の生産が可能になると言われています(写真2)。

2023年度の取り組み
2023年度の予備試験では、夏秋どりのミニトマトで生育調査(茎径、生長点開花果房間長)(図1)、収量調査 (規格内7–25 g未満重量、不良果重・不良果内訳)、糖度測定、給液量等について実際に栽培しながら調査しました。

傾向として、植物の草勢が弱く着花数が減少したため、慣行の隔離床養液栽培に比べ収量が減少しました。しかし、慣行の栽培法に比べ作物への水ストレスがかかりやすいため糖度は高く(図2)、また、施肥量とかん水量は5割程度削減されました(表1)。


環境負荷軽減と高品質を目指す
農水省のみどりの食料システム戦略の方針の中では、化学肥料の削減が求められています。NSPはこの課題の解決につながるほか、かん水の量やタイミングを自動でコントロールできるという利点があります。
2023年度予備試験の結果を受け、2024年からは収量向上を目標に、栽培システムや管理方法を見直し、定植後および夏期高温期の草勢確保に向けて取り組んでいます。環境に配慮しつつ、高糖度で高品質なミニトマトの栽培を目指す手段の㆒つとなるか、今後も検証していきます。