GAP導入で気付けた「当たり前が当たり前じゃなかった」ということ。

キーワード:GAP安全対策農作業事故防止農作業安全
写真1.GAP認証審査の様子。
写真1.GAP認証審査の様子。
この記事は2024年6月3日に掲載された情報となります。

JAこしみず販売部青果課課長松尾直樹さん

JAこしみず 販売部 青果課
課長 松尾 直樹さん

JAこしみずのブロッコリー部会では、昨年、JGAPの認証を取得しました。その経緯とGAPの考え方を取り入れたリスク管理や導入の成果についてお聞きしました。

掲載写真:JAグループGAP第三者認証取得支援事業より(食品品質・表示管理課提供)

POINT

• 自分の作業を見直し考えることがリスク低減につながる
• 「意識して」「行動に移して」「検証して」「行動する」を繰り返す
• 可視化することで安心・安全な営農であることが確認できる

 

きっかけは社会的気運の高まり

JAこしみずのブロッコリー部会は、13戸の生産者が年間約45万株(135t)を主に道外へ向け出荷しています。以前よりGAPを参考にJAこしみず独自で事故防止と生産工程の確認のためにチェック作業を実施していましたが、おのおのの生産者が行うだけでした。

しかし、GAP認証を取得する団体が増えていることや、取引先が2030年からGAP認証取得産地を取り引きの条件にするとの情報を受け、GAPを時代に沿ったものとして考えるようになりました。

また、リスクを可視化することで、生産者を守る手段にもなることから認証取得に向けて取り組みを始め、2023年8月にJGAP認証を取得しました。

 

しっかり説明し、理解を得る

JGAP認証の取得に動き出したのは2021年。当時、JA全農・JA全中で実施していた「J‌AグループGAP第三者認証取得支援事業」とマッチし、さまざまな支援を受けることができました。

全農の支援員に何度も足を運んでもらい、事務局の準備から選果場での注意点、生産者への説明方法など、細かなノウハウを教わりました。部会員や役員に向けしっかりと伝えたのは、「GAPは難しいことではない」ということと費用対効果についてです。

中でも「平均年齢が70代の部会でも取り組んでいる」という事例から、「難しくないし当たり前のこと」「ハードルは高くない」という印象を会員の皆さんに持っていただけたようです。

また、毎年負担することになる費用面については、GAPを取得したからといって商品単価が上がるわけではなく、GAPはあくまで「安心・安全をユーザーに届ける」「自分の生産工程に間違いはないということを確認する」ためのツールであることを強調し理解を得ました。

大変だったのはマニュアル作りです。全農の支援システムを活用しながら約2年かけました。もう一つがJ‌A内でのGAP内部監査員やGAP指導員の確保。

ともに資格が必要なので異動等で担当がいなくなるなどの課題があり、現在も対策を模索しているところです。

 

可視化することでリスクを回避

JGAP取得のメリットは、生産から出荷まで安心・安全な工程で取り組んでいるかどうか、数字などで可視化できたことと、生産者とJAの意識が統㆒され、同じ目線で考えられるようになったこと。

そして、生産者の点検意識が高まり、事故を未然に防ぐことにつながったことです。

具体的には、自分の作業の見直し、資材や倉庫の整理整頓、問題点の洗い出しやリスク管理の徹底など。生産者からは、「今までの当たり前が当たり前でないんだ」、「これまで甘かったことが分かった」などの声があがり、事故防止に対する認識も深まりました。

また、当たり前のことを確実に行うことで、安定した品質の生産物を維持できる確信を持てるようになりました。

 

今後も農作業事故を防ぐため

GAPの導入で、自分の農業生産工程が安心・安全な農産物づくりにつながっているか確認し、できていない部分を洗い出し、どうしたらできるのかを考えることが事故リスクの低減にもつながります。

点検項目なども見直しながら継続していきたいです。ブロッコリーについては、部会の意識の高さがマッチしました。他品目でも必要ですが、大規模な部会ではまだまだ課題が多いのも事実。ブロッコリーを成功例にしていけたら良いですね。

GAP認証取得への理解を得るために

GAP認証を危機回避につなげるために