この記事は2024年2月1日に掲載された情報となります。
北海道農政部 生産振興局 技術普及課
令和5年の夏は全道的に記録的な高温で推移し、幼穂形成期、最高分げつ期が前進化し、出穂期、成熟期も早くなりました。一方、倒伏の多発や玄米品質の低下が見られるなど、気象による悪影響が大きい年となりました。
(1) 倒伏の多発について
7月前半は高温(高夜温)で経過し、日照不足となる期間もあったため急激に節間が伸長しました。特に下位節間の徒長により稈質が弱体化し、登熟期の穂へのでん粉転流が低下したものと推察されます。
また、猛暑の影響により、茎葉の枯れ上がりが見られました(写真1)。稈、葉鞘とも脆弱になったところに、8月中旬の本道への台風接近により倒伏が発生しました。その後の風雨や病害(いもち病、紋枯病、疑似紋枯症)によって助長され、倒伏の多発に至ったものと考えられます。
(2) 白未熟粒の多発
これまで北海道における白未熟粒の発生は、日照不足に伴うもの、多肥栽培によって助長されたものなど、発生要因は本州の高温障害とは異なるものが主体でした。しかし、令和5年は猛暑により本州型の高温障害に遭遇したと考えられます。また気象条件だけでなく、生育状況(穂揃性の不良、過剰籾数、倒伏など)や水管理等も白未熟粒の発生を助長したものと考えられます(図1、2)。
(3) 低タンパク米出荷率の低下
白未熟粒の多発に加え、低タンパク米出荷率の低下も見られました。著しい高温により登熟歩合が低下し、相対的にタンパク質含有率が高くなったと推察されます。
また、生育期間を通じて高温多照傾向が継続したため、稲の生育が旺盛となり、窒素吸収が盛んになったことも一因と考えられます。