この記事は2017年2月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 米穀部 米穀生産課
POINT!
「そらゆき」「ななつぼし」「きらら397」を用いた疎植栽培の実証試験に取り組み始めました。
1.はじめに
水田作の経営規模の拡大や労働力不足などに対応するため、低コスト・省力化技術の開発と普及が求められています。
ホクレンではそうした技術の導入や地域への普及に向けた支援の一環として「低コスト・省力化技術に係る実証試験(平成28年~30年度)」を実施しています。ここでは、その中から疎植栽培試験の初年目の結果をご紹介します。
2.疎植栽培について
疎植栽培とは、苗の株間を慣行よりも広げて植え付けするものです。株間を広げることで、育苗に必要な資材の削減や作業時間の短縮が見込めます。
そこで、平成28年度は生産者やJA 等関係機関の協力のもと、全道六カ所で実証試験を行いました。
3.疎植栽培に期待する効果
①苗箱数の削減
必要な苗箱数が減少することにより、育苗資材費の低減・苗床の縮小、運搬作業の軽減等の効果が見込まれます。
②偏穂数型品種で安定収量を確保
「そらゆき」等の偏穂数型品種(1穂あたりの籾数が多い)を用いることにより、株間を慣行より広げても安定した収量確保が見込まれます。
4.平成28年度ホクレン疎植実証試験結果概要~上川農業改良普及センター調べ
①収量
今年度の試験では、地区や栽植密度により違いはあるものの、慣行比90~99%の収量となりました。疎植栽培でも慣行栽培並みの収量が得られる可能性が示されました。
また、28年産は初期生育が悪かったことから、仮に平年で推移した場合、慣行栽培との収量差は縮小することも期待できます。
②その他栽培上の傾向
株間が広がると、出穂期・成熟期はやや遅れる傾向が見られました。穂数と稔実籾数は少なくなる傾向にあり、また、タンパク値は20㎝程度の株間では、慣行と比較しあまり変わらない傾向にありました。
5.疎植栽培の課題
なお疎植栽培の導入にあたっては、次のような課題があり、継続して検証していきます。
①出穂期・成熟期
ア.初期生育に、ばらつきがあり、出穂期・成熟期が遅れる傾向にあります。また、株間を広げすぎると遅れ穂が多くなり、登熟歩合が低下し収量が不安定になる場合があります。
イ.成熟期が遅れないよう適切な初期生育の促進技術として「早期移植」や「側条施肥」等の対応を検討することが必要です。
②栽植密度
ア.品種・気象・土壌条件に適した株間の調査が必要です。
イ.成熟が遅れると後半まで窒素を吸収するため、玄米中のタンパク含有率が若干上昇する場合があります。
ウ.移植機に設定されている株間以上の疎植を行う場合、現行のままで対応可能な機械もありますが、移植機の種類や型式によってギアの交換・仕様変更が必要な場合があります。
6.今後に向けて
29年度は、低コスト省力化技術の導入に向けた支援として疎植栽培試験の他、多収栽培等の産地実証試験実施・ICT 関連情報の収集もあわせて行い、低コストや省力化生産の一助となるようさまざまな成果を紹介していきます。