この記事は2024年10月28日に掲載された情報となります。
地震や台風、大雪などでハウスが被害を受け、営農に大きな影響が出てしまったら…。「もしも」に備える園芸施設共済についてご紹介します。
北海道農業共済組合 農作部 園芸果樹グループ
課長 横山 勝美さん
毎年必ずあるハウスの被害
春先の突風から夏の豪雨、秋の台風、冬の爆弾低気圧まで、自然災害のリスクは㆒年中あります。雹(ひょう)でハウスのフィルムが破損したり、大雪でパイプが変形したり、思いがけない災難に見舞われてしまうこともあるでしょう。
NOSAI北海道が過去10年間にお支払いした園芸施設共済の共済金を見ても明らかなように、被害のない年はありません(図1)。
こうした予測できない災害に備えるのが「園芸施設共済」です。かつてはフィルムの被覆期間のみの補償でしたが、現在は被覆していない期間についても補償の対象となっています。
オプションで幅広く補償
園芸施設共済はパイプ(ハウス本体)とフィルム(被覆材)の被害を補償します。オプションで、ボイラーや換気施設などの「附帯施設」をはじめ、壊れたハウスの「撤去費用」、新しく建てるときの「復旧費用」、ハウス内で栽培している「施設内農作物」の補償なども組み合わせることができます(図2)。
共済掛金は、パイプの太さやハウスの設置面積、築年数、フィルムの種類、使用年数などをもとに算出されます。NOSAI北海道のホームページでは、掛金を簡易的にシミュレーションすることも可能です(図3)。最寄りのNOSAI北海道へ問い合わせいただければ、詳しい見積書もお届けします。
NOSAI北海道のホームページで、掛金を簡易的にシミュレーションできます。リンク先へ>
補償の範囲を選択可能
ハウス本体の補償金額は、国から示される㎡当たりの標準価額に、設置面積、経過年数に応じた時価現有率をかけて算出されます。標準加入ではハウス1棟につき損害額が3万円(または共済価額の5%)を超える被害に遭った際に共済金をお支払いしますが、特約をつけると1万円の損害から共済金の対象になります。掛金の差はわずかなので「小損害不填補1万円」の特約をつけるようおすすめしています。
反対に、補償の対象を損害の大きな時だけに限定することで掛金を安く抑えることもできます。損害が10万・20万・50万・100万円以上と、選択した額が大きくなるほど、掛金が割安になります。
ハウスを再建するために
手厚い補償を希望される方には、付保割合追加特約と復旧費用特約をおすすめします。付保割合(補償の割合)は1棟ごとに40〜80%から選択することができます。付保割合80%を選択し、更に付保割合追加特約を20%にして、復旧費用特約を付加すると、経過年数にかかわらず、加入時の再建築価額まで補償されます(図4)。年数が経てば減価償却により補償割合が下がるものの、付保割合追加特約と復旧費用特約で補償割合の低下をカバーできます。
※標準加入であれば補償割合は青い部分のみ。1年ごとに下がっていきます。復旧費用特約に入ると、ハウスが古くなっても再建築価額の8割を補償。更に手厚くしたい場合は、赤い部分の2割を付保割合追加特約として追加。2割ではなく1割も選べます。
農作物は収入保険でカバーも
ハウス内で栽培する農作物を補償する「施設内農作物」のオプションは、販売価格の補償ではなく、標準的な生産費の補償であるため、高級メロンなどは補償の単価と見合わない場合もあります。そんな時に頼りになるのが「収入保険」です。農業者の農産物販売収入の全体を対象に、経営努力では防ぎようのない収入減少を補填します。大雨でハウス内に水が入り、ハウスは無事だったものの、中の作物が出荷できなくなってしまった場合など、さまざまなリスクを補償します。コロナ禍の需要変化による売り上げ減少も補償の対象になりました。ただし、施設内農作物のオプション付加や、水稲や麦など品目ごとの農業共済とは重複して加入できません。また、加入には青色申告を行っていることが条件になります。
災害の備えとして活用を
昨年度の道内の「園芸施設共済」の加入率は77.3%でした(図5)。近年、異常気象の影響で思わぬ被害が多発している事もあり、加入される方は増加しています。
NOSAI北海道では安心して営農していただくため、園芸施設共済や収入保険の周知に力を入れ、加入推進に取り組んでいます。共済事業は、共済掛金のおよそ半分を国が負担する公共性の高い制度です。「園芸施設共済」はいつからでも加入できますので、未加入の方は雪の季節が来る前にぜひご検討ください。