この記事は2023年8月1日に掲載された情報となります。
自然災害や不慮の事故による損失を補てんし、農業経営へのダメージを緩和する農業共済制度。NOSAI北海道の大野さんに制度の概要と、今からでも加入できる園芸施設共済についてお聞きました。
北海道農業共済組合
農作部 園芸果樹グループ
課長 大野 照幸さん
「『園芸施設共済』は近年、補償の選択肢が広がっています」
万が一の災害や事故に備える農業共済制度
農業共済は農業者と地域を守る手段
農業共済制度は1947年に誕生し、対象品目を増やしながら生産者の経営の安定を支えてきました。北海道には春先の強風、夏の大雨、秋の台風、冬の大雪など、一年を通して自然災害のリスクがあります。
中でも意外に多いのは雪によるハウスの被害で、フィルムを張っていなくてもパイプが雪に埋まって変形してしまうケースが少なくありません。
園芸施設共済は、以前はフィルムの被覆期間のみ補償の対象でしたが、今は被覆していないパイプも対象になっています。また、昨今の資材高騰を受け、評価額の基礎となる標準価格も2021年4月に改定されました。
災害はいつ我が身に降りかかるか分かりません。再建できなければ農業のみならず地域経済の衰退にもつながります。NOSAIは、営農を守ることは地域を守ることだと信じています。現在、道内の園芸施設共済の加入率は72.1%。まだ加入されていない方は、ぜひ最寄りのNOSAIにご連絡ください。
農業共済の掛金のおよそ半分は国が負担しています
加入者が掛金を出し合って共同財産を準備し、災害に遭った加入者に共済金を支払う相互扶助を基本としています。民間の保険会社と大きく違うのは、共済掛金のおよそ半分を国が負担していること。国が負担することで共済金の支払いに支障がでないよう措置されています(図1)。
※NOSAI団体は、国からの補助金を受けている公共性の高い団体です。
農業共済は対象品目が決められています
北海道で実施している農業共済制度は、以下の品目を対象にしています。
【農作物共済】水稲、麦(秋播き小麦・春播き小麦・二条大麦・六条大麦・春播き裸麦)
【畑作物共済】ばれいしょ、大豆、小豆、いんげん、てん菜、ホップ、スイートコーン、たまねぎ、かぼちゃ、そば
【園芸施設共済】ハウス本体、被覆材(オプションあり)
【果樹共済】りんご、ぶどう
【家畜共済】牛、馬、豚
※農作物共済、畑作物共済、果樹共済は加入申込期間が設けられています。
※引受方式には全相殺方式、半相殺方式、地域インデックス方式があり、それぞれ共済金算出の基になる収穫量の算出方法が異なります。
毎年道内どこかで災害が発生
ハウスの被害のない年はありません
道内では直近3年間を見ても、毎年1,000棟以上のハウスの被害が報告され、3億円前後の共済金が支払われています。台風で大きな被害を受けた2004年は道内で2万棟を超えるハウスが被災し、共済金は22億円を超えました。
補償を大きな損害だけに限定し掛金を抑えることもできます
以前はハウス1棟ごとの損害額が3万円(または共済価額の5%)を超える被害しか共済金が支払われませんでしたが、特約をつければ1万円の損害から対象になります。反対に、補償の対象を損害の大きな時だけに限定することで、掛金を安く抑えることもできます。
※地域や被覆期間等により割引率は変わります。
NOSAI北海道のホームページで、掛金を簡易的にシミュレーションできます。リンク先へ>
パイプとフィルムの補償に組み合わせるオプションが多彩に
園芸施設共済は、基本的にパイプ(ハウス本体)とフィルム(被覆材)のみの補償です。ボイラーや換気施設などの附帯施設をはじめ、壊れたハウスの撤去費用や復旧費用、ハウス内で栽培している施設内農作物の補償もオプションで組み合わせることができます(図3)。
※附帯施設・施設内農作物は全棟加入、撤去費用・復旧費用は棟ごとに設定できます。
※加入は未被覆期間を含めて1年間です。
最大で再建築価額(新築価額)まで補償する手厚い補償も選べます
ハウス本体の補償金額は、国から示される㎡当たりの標準価額に設置面積、経過年数に応じた時価現有率をかけて算出されます。付保割合(補償の割合)は1棟ごと40〜80%から選択できますが、80%を選択して、さらに付保割合追加特約20%と復旧費用特約に加入すると、経過年数にかかわらず、加入時の新築価額まで補償されます。
年数が経てば減価償却により補償割合が下がるため、復旧費用と付保割合追加の特約で再建築価額をカバーします(図4)。
※特約部分の掛金については全額加入者負担で国庫負担はありません。
※各データ提供:NOSAI北海道