摘房によるミニトマトの秋期増収栽培方法

キーワード:ミニトマト品種技術栽培方法
摘房によるミニトマトの秋期増収栽培方法
図1.処理方法

 

この記事は201年6月1日に掲載された情報となります。

 

ホクレン 農業総合研究所 作物生産研究部
主査 堀江 幸生さん

 

POINT!
❶単価が低い8月収穫見込みの花房二つを切除することで、草勢の低下を抑えます。
❷これによって上位段の収穫果数が増え、秋期収量が向上します。
❸単価が高い秋期収量割合が増えることで、収益向上が見込めます。

 

北海道のミニトマトの生産量は8月にピークとなり、その後減少していきます。このため、単価は8月に低く、その後高くなる傾向にあります。そこで、単価の低い8月の収量は抑え、単価の高い9月以降の収量を増やすことにより収益向上が見込める栽培方法をご紹介します。

 

栽培方法の概要

8月に収穫が見込まれる花房を開花が始まった時点で切除します。ホクレン長沼研究農場で行った試験では、5月1日にポット苗で定植し、第4花房と第5花房を切除しました。

ミニトマトは開花から約50日程度で収穫となるため、8月から逆算して切除する花房二つを決めます。追肥は、花房を切除しない場合と同様に実施します。この処理により、夏期の成り疲れを軽減し、草勢を保ったまま秋期の収穫を迎えることができます。

 

慣行の栽培方法との比較

花房切除の効果を調べるため、花房を切除した区(処理1)と、それに加えて側枝の葉を2枚利用することで草勢をさらに保持することを狙った区(処理2、3)を設け、慣行(無処理)と比較しました。なお、収穫段数は全て10段としました(図1)。

花房直下の側枝の葉を2枚残して摘心。

 

その結果、全ての処理区は規格内の総収量が慣行と変わらず、8月の規格内収量は抑えられ、9月の規格内収量が増加しました(図2)。

 

図2.株当たりの月別規格内収量とその合計
図2.株当たりの月別規格内収量とその合計

 

これは、9月の規格外(小果)が減り、収穫果数が増えたためです(データ省略)。単価が高い9月の収量割合が増えることで、札幌市場の月別平均単価(表1)で出荷額を試算すると、株当たり100〜150円の収益向上が見込める結果となりました(表2)。

 

表1.ミニトマトの札幌市場 月別平均単価
表1.ミニトマトの札幌市場 月別平均単価(円/kg)(平成26~30年)

 

表2.株当たりの出荷額試算(円)
表2.株当たりの出荷額試算(円)
※小数点以下は四捨五入して表記しています。

 

例えば、ハウス1棟に800株定植していたとすると、ハウス当たり約10万円の収益向上となります(表3)。

 

表3.ハウス1棟当たり
表3.ハウス1棟当たり(800株定植仮定)の出荷額試算(円)
※小数点以下は四捨五入して表記しています。

 

なお、花房の切除のみでも収益向上となりますが、側枝葉を利用するとさらに良い結果が見込めます。ただし、側枝からも脇芽が発生し管理作業はやや増加することから、切除する花房直下の側枝葉のみ利用するのがおすすめです(処理2)。

 

推奨の営農モデル

青果物の単価は年や市況などにより、大きく変わります。このため、価格変動のリスク分散や、収穫作業の時期を分散させるためにも、作付けの部を今回紹介した栽培方法にするのがおすすめです。とはいえ、新たな栽培方法が個々の圃場条件と合わないことや、導入することで他品目の作業と思わぬ競合が発生することもあります。初年度は数株〜1畦程度の小規模で様子を見ながら、徐々に規模を拡大させましょう。

この栽培方法が、皆さんの営農の参考になれば幸いです。