この記事は2024年12月16日に掲載された情報となります。
高い品質を実現し、維持し続ける「達人」の取り組みには営農のヒントがあります。今回は令和5年度北海道麦作共励会で個人の部 秋播小麦第2部最優秀賞を受賞した上士幌町の岩瀬紀昭さんにお話を伺いました。
過去2年で町平均収量対比114%と多収な上、一等麦比率96%と高い歩留まりが評価され、「個人の部 秋播小麦第2部 最優秀賞」に輝いた上士幌町の岩瀬紀昭さん。
町内のバイオガスプラントから出る有機物を活用して循環型農業に取り組み、生産者仲間に積極的に情報を提供し地域に貢献しています。
畑を観察すると答えが見える
10年ほど前までは小麦の収量がなかなか上がりませんでした。それでも、自分の畑と仲間の畑をよく観察し、仲間の栽培法について話を聞きながら、自分の栽培方法を少しずつ変えることで収量品質が向上しました。
㆒番重要なのは播種です。天候を見ながら土壌がほどよく湿っている時に、丁寧に砕土し播種します。播種の深さは浅くなり過ぎず、播種量は基準よりやや少ないくらい。毎日畑をよく見ることもポイントです。
朝、午前、午後、夕方と4回は見て回ります。そこで小麦の変化に気づけば、病害虫の早期発見、適期防除にもつながります。
基肥は土壌診断に基づき、越冬に必要な生育量を確保できる程度に与えます。以前は全層施肥も試みましたが、肥料が深くなりすぎ生育ムラができたことから作条施肥にしています。
スマート農業も積極的に取り入れています。追肥の際はドローンで撮影した画像で葉の色を確認し、濃度により施肥量を調整することで均等に生育するようになりました。
また、GNSS自動操舵トラクターを導入することで機械作業が楽になりました。誰でも真っ直ぐ走らせることができるので、短期雇用の従業員に任せられる作業も増えました(写真1)。
傾斜地もあるので、圃場の外周を少し空け、安全に作業しやすい工夫もしています。
地域で循環型農業を実践
土づくりには、株式会社上士幌町資源循環センターのバイオガスプラントから出るメタン発酵消化液(以下、消化液)を活用しています(写真2)。
このセンターは2017年に地域の家畜排泄物を発電に利用するために設立され、3年前に声が掛かり取締役になりました。設立前は自分の農場の家畜排泄物を堆肥化していました。センターができて作業がかなり軽減されました。
消化液は秋まき小麦の収穫後、緑肥のえん麦を播く前に散布しており、効果も十分な上、安価で利用できます。これまで町内の酪農家を中心に利用されていましたが、畑作農家にも利点を伝え、利用者が増えているところです。
そして何より、良い小麦づくりに大切なのは、人と会って話すことです。先輩から教わり、仲間と切磋琢磨することが刺激になり、良い結果につながります。
最優秀賞を受賞したことで後輩が相談に来てくれ、すぐに改善策を実施したことで成果が出てきました。この積み重ねで、上士幌町の農業がもっと良くなっていけばと思います。
優れた技術を全道そして全国へ
稲作麦作総合改善研修会での表彰式
北海道農産協会では、麦の生産振興のため、「北海道麦作共励会」を実施しています。
今年で45回目となり、麦作生産において生産技術や品質改善、経営改善の面から創意工夫を持ち、先進的で他の模範となる麦作農家や麦作集団を表彰し、その業績を広く紹介するものです。
なお、本共励会の最優秀賞受賞者は、全国米麦改良協会主催の「全国麦作共励会」に推薦され、全国の麦作生産者に対し北海道麦作の取り組みを広く紹介する機会となっています。