Profile:1975年生まれ。1999年に23歳で就農し、現在は(有)共進農場の3代目として経営を担う。耕地面積59haの圃場で、馬鈴しょ、枝豆・いんげん、秋小麦、てん菜の4年輪作を行う。
この記事は2024年8月19日に掲載された情報となります。
「北海道十勝総合振興局長賞」を受賞した大島克仁さん。加工用馬鈴しょと同じ畝間・株間で生産する疎植栽培と、有機肥料を使用した土づくり、GNSS-RTKガイダンスを利用した心土破砕などの栽培技術により、厳しい天候条件でも高い収量とライマン価を確保していることが評価されました。
有機肥料、疎植栽培を導入
以前は4年輪作のうち、馬鈴しょは全量加工用でした。収穫時の負担軽減などのために3年前から少しずつでん粉原料用に切り替え、2024年は3分の2以上がでん粉原料用になっています。
土づくりには、養豚場から購入する豚フンを活用しています。粉に近いペレット状で仕入れ、てん菜を作付けする前の秋に散布。
その後作が馬鈴しょとなっており、毎年土壌診断をした上で残存窒素を考慮し、追肥を省くなど適正な施肥設計に努めています。
「加工用馬鈴しょのそうか病対策として始めましたが、収量も安定したため、でん粉原料用にも取り入れています」と大島さん。
また、でん粉原料用馬鈴しょの作付け当初から、疎植栽培に取り組んでいます。畝間75cm、株間30cmから開始し、2024年は株間33cmで実験中。
「これは、加工用馬鈴しょと同じ設計です。加工用でも高い収量が得られたため、でん粉原料用でも同様にしました」
その効果は収量が確保できただけではありません。株間の風通しが良くなり、茎がしっかり太くなります。
高温時の栽培で注意していることは、病気になりやすいことと、早枯れが起こりやすいこと。疎植栽培で強い株を作ることで、これらをカバーできました。
猛暑でも高ライマン価を実現
また、猛暑で全道的にでん粉原料用馬鈴しょのライマン価が下がった2023年、大島さんはライマン価19.5%と地区・全道平均より高い結果が得られました。
適正な施肥設計で窒素分を調整していることと、疎植栽培により厚い培土で覆われることで暑熱対策にもなったことが要因と考えています。
そのほか、根張りを良くするためにGNSS–RTKガイダンスを使用し、自動操舵で種芋を植える畝の位置に合わせて、正確な心土破砕と整地。
また、肥料が種芋に与えるストレスを減らすため、施肥と植付けは同時に行わず、施肥の後に再度機械を入れて植付けをしています。これらも、加工用馬鈴しょの技術を生かしている点です。
まだ試行錯誤の途中、と言う大島さん。「中札内には知識や技術が豊富な生産者がたくさんいるので、多くの方の話を聞いて実践してみた結果だと思います。
JAの協力も得ながら、今後は効率の良い収穫方法も模索したいと思います」と、地域㆒体となって技術向上に取り組んでいます(写真1)。
共励会 表彰式から栽培ノウハウを広げたい
でん粉原料用馬鈴しょ栽培共励会 表彰式
北海道産でん粉原料用馬鈴しょは、2022年産からジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種へ100%切り替えを実現。
一方で、収量の安定化など、各地区の条件に合った栽培技術確立が急務となっており、馬鈴しょでん粉の安定供給体制確立に向けた検討プロジェクトの主催による「第1回 でん粉原料用馬鈴しょ栽培共励会 表彰式」が2024年6月に開催されました。
全道系統でん粉工場を通じ推薦された各地区の優良事例の中から厳正な審査の結果、今回は7名の方が表彰されました。
現在、北海道産でん粉原料用馬鈴しょは作付面積減少や気候変動の影響等から年々供給量が減少。
需要量に対し供給量が非常に少ない状況です。同プロジェクトでは「表彰された優良技術が全道の生産者のヒントとなり、馬鈴しょでん粉の生産量拡大を願っています」とコメントしています。