施肥

「北海道施肥ガイド2020」とその使い方

キーワード:土壌分析施肥
この記事は2021年6月1日に掲載された情報となります。

道総研 中央農業試験場 農業環境部環境保全グループ 研究主幹 谷藤 健

道総研 中央農業試験場
農業環境部環境保全グループ 研究主幹 谷藤 健

Profile:北海道大学大学院農学研究科修了。1993年道立北見農業試験場に入庁。中央農試、十勝農試などを経て現職。小麦育種、畑作物の品質・施肥に関する研究に従事。山形県出身。

POINT
●北海道施肥ガイドは、作物に最適な施肥量を考える時の力強いパートナーです。

「北海道施肥ガイド」って?

作物には、それぞれ最適な養分吸収量があります。土壌に含まれる養分と、肥料で与える養分の合計が適切であれば過不足なく生育し、収量と品質のバランスが良い生産物となります。

「北海道施肥ガイド」は、土壌の養分レベルを知り(土壌診断)、それに基づいた適正な施肥量を決めるための目安を示したものです。5年おきに改訂され、昨年「北海道施肥ガイド2020」が刊行されました(図1)。

北海道施肥ガイド2020
図1.北海道施肥ガイド2020

目指している施肥管理

「適正な施肥量」の考え方とは図2のようなもので、環境保全や持続的な安定生産、品質のバランスが最も良いのは「Bエリア」です。施肥ガイドはここを目指した施肥管理を前提に施肥量を設定しています。最大収量のみを目指すのであれば「Cエリア」での施肥管理が確実なように見えますが、この場合、生産物の品質低下を招く可能性があるほか、環境への負荷が徐々に蓄積し、やがてはDエリアへ移行する恐れがあります。

適正施肥の考え方
図2.適正施肥の考え方

施肥設計の手順

道内各地の土壌の、標準的な地力において期待される収量(基準収量)を得るための施肥量を「施肥標準」と言い、いわば目盛りの中央にあたります。これを確認し、次に土壌診断を行い、作付けする圃場の地力レベルを把握します。

作付土壌が標準的レベルより肥沃であれば過剰な分を減肥し、逆に地力がなければ不足している分を増肥する、または堆肥など有機物の施用で養分量を底上げしてあればその分を考慮して施肥するなど、目盛りの調整を行うのが施肥設計の基本です(図3、4)。

作物の必要養分量から見た施肥量の調整
図3.作物の必要養分量から見た施肥量の調整
施肥ガイドを用いた施肥設計の手順
図4.施肥ガイドを用いた施肥設計の手順

施肥ガイドでは道内を大きく18地帯に区分し、土壌タイプも「低地土(沖積土)」「火山性土(黒ボク土)」「台地土」「泥炭土」の4区分あります。地帯と土壌の組み合わせごとに各作物や作型の施肥標準があり、この施肥量が最適となる土壌診断値を、養分別に「基準値」として設定しています。診断値が基準値より低ければどの程度増肥すべきか、逆に高ければどの程度減肥できるか、という目安も示されています。

現在、道内の農地では特にリン酸、カリが過剰傾向です。言い換えれば土がメタボの状態であり、ダイエット、すなわち肥料を減らし、土壌中の養分をなるべく多く活用することが環境保全と生産コストの両面から有効です。

「北海道施肥ガイド」を営農のパートナーに

施肥設計のポイントは、①作付けする圃場の施肥標準量をつかみ、②土壌診断値から施肥量の増減を決め(目盛り調整)、③有機物(堆肥など)を施用する場合はその種類や量に応じて化学肥料を減肥、です。この他にも、施肥ガイドにはさまざまなケースを想定した施肥の対応が掲載されています。

低コストで合理的な施肥設計、環境保全に配慮した営農のパートナーとして、「北海道施肥ガイド2020」を有効に活用いただければ幸いです。