この記事は2019年6月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
POINT!
●カリ肥料の働きを知り、作物や土壌、有機物の施用に合わせた適正な施肥に努めましょう。
カリの役割
肥料の3要素(窒素・リン酸・カリ)の一つであるカリ。光合成などに深く関係し、根や茎を強くしたり、開花や結実を促進する働きがあるといわれています。カリが不足すると葉の黄化や縁枯れが見られたり、果実の品質が低下します。
また、カリ成分の特徴として作物が必要以上にカリを吸収する「ぜいたく吸収」を起こしやすく、土壌中の苦土や石灰との養分バランスが崩れると作物に悪影響を及ぼします。カリの過剰施肥にならないよう気をつけましょう。
カリ肥料の種類
①「塩化カリ」と「硫酸カリ」
代表的なカリ肥料は塩化カリと硫酸カリです。世界で流通するカリ肥料は塩化カリが主体で、一般的に硫酸カリは塩化カリに硫酸を反応させて製造されるため、肥料コストは硫酸カリの方が高くなります。
どちらのカリ成分も速く効く水溶性で、肥料としての性質の違いは副成分にあります。塩化カリの副成分である塩化物イオン(塩素)は、馬鈴しょなどでは収量や品質が低下するとされています。また、塩化カリは土壌EC※を高めやすく、耐塩性の弱い作物では出芽への影響が心配されます。
このことから、北海道では主に水稲・麦類・牧草では塩化カリ、馬鈴しょ・豆類・野菜では硫酸カリが使用されています。
※電気伝導度。塩類濃度の指標となる。
②ゆっくり効く「けい酸加里」
水稲向けのケイ酸肥料としても使用されている銘柄「けい酸加里」のカリ成分は、く溶性のためゆっくり効きます。カリが徐々に溶けて作物に吸収されるので、ぜいたく吸収を起こしにくく、作物の健全な生育に役立ちます。
③肥料名の意味(図1)
肥料名の数字の前につく記号は一部を除きカリの種類を表しています。肥料を選ぶ際に参考にしてください。
カリのコスト低減に向けて
①有機物施用を踏まえたカリ減肥(表1)
稲わら・堆肥・スラリー等の有機物には肥料として利用できるカリ成分が多く含まれているため、その施用により化学肥料のカリを減らすことができます。なお、土壌中のカリは蓄積傾向ですが(図2)、カリ減銘柄を使い続けると土壌中のカリが低下し過ぎることもあります。定期的な土壌診断を行い、適切なカリ減肥に取り組みましょう。
②塩化カリへの切り替え
ホクレンでは肥料コスト低減のため、農業試験場と連携し、硫酸カリから切り替えて施用しても問題ないことを確認した作物について、塩化カリへの切り替えを進めています。
移植てん菜では地域や土壌養分に合わせた銘柄を取り揃えていますので、ご検討ください(表2)。
また、飼料用とうもろこしでは平成31年にまとめられた新技術(図3)をもとに、今年度から施肥合理化圃場試験を設置し、現地圃場での効果を確認しながら切り替えを進める予定です。