この記事は2018年4月1日に掲載された情報となります。
ホクレン|農業総合研究所|営農支援センター |営農技術課
POINT!
❶玉ねぎの紅色根腐病は2〜3年の連作で菌密度が増え発生リスクが高まります。
❷輪作が発生軽減には有効です。
紅色根腐病について
玉ねぎの収穫時に見られる赤い根、実は土壌中の菌によって引き起こされる“紅色根腐病”の症状です(写真1)。
国内外の玉ねぎ圃場で毎年のように見られますが、病気がひどくなると多くの根が枯死し、葉先もしおれて球の肥大が抑えられてしまいます。
夏期に高温・乾燥条件が続く年には大きな被害を生じ、最近では2013〜2014年に問題となりました。ホクレン農総研では本病への有効な対策を探るため、発生生態について研究しています。
連作で高まるリスク
この病気は新畑ではほとんど見られず、連作により年々発生しやすくなると考えられています。しかし、発生程度が年によって大きく異なるため、土の中ではどのようなことが起きているのか、確かめる必要がありました。
今回、JAきたみらい、網走農業改良普及センターの協力のもと、現地の圃場で病原菌量に関わる調査を行いました。
その結果、玉ねぎを作付けする度に土壌中に菌が蓄積し、2〜3年の連作で発生圃場と同じくらいの菌量になることがわかりました(図1)。
このことから連作により被害発生の危険性が着実に高まっていくことが示されました。
対策について
これまでに病気に強い品種の作付けや、6月中の乾燥時の潅水が有効であることがわかっています(北海道農政部‒平成25年指導参考事項)。
また、輪作の有効性も古くから知られていますが、作物種やその期間は明らかではありませんでした。そこで今回、北見市内の圃場で、輪作による病原菌の増減について調査しました。
その結果、てん菜と大豆をそれぞれ1年間ずつ作付けした圃場で、菌量が減少していることがわかりました(図2)。
この病原菌は色々な植物に感染しますが、その中でも“好き嫌い”があります。特に、長い冬を越すための体と考えられる“厚膜胞子”の形成に作物間で差があり(写真2)、てん菜・大豆には形成しにくいことが明らかになりました。
一方で、玉ねぎ・馬鈴しょ・小豆には多く形成します(図3)。
このため、輪作をする作物としても向き不向きがあると考えられます。また、同じ作物でも品種によって反応が異なる可能性があることから、本病の対策も兼ねて他作物を導入する際には注意が必要です。
被害を抑えるために
玉ねぎはリン酸の多い、いわゆる熟畑で安定して取れるとされてきたため、一般的に連作されます。しかし、同じ作物を繰り返し作付けすることで、障害が生じる危険性も高まります。
今回ご紹介した玉ねぎの紅色根腐病は、土壌中にいつのまにか病原菌が蓄積し、高温・乾燥条件が重なったことで、顕在化した病害であると考えられます。
本病をうまくコントロールするためには、畑を病気の発生しにくい環境に保つことが重要です。今後は輪作に加え、後作緑肥の効果を検証しながら、さまざまな対策の可能性を探っていきたいと考えています。
本試験の実施にあたりご協力を賜ったJAきたみらい組合員ふれあい室の津田秀樹氏、網走農業改良普及センター専門普及指導員の田中理恵氏に厚くお礼を申し上げます。
(営農技術課 吉田 直人)