でん粉原料用馬鈴しょ新品種「コナヒメ」

キーワード:コナヒメでん粉品種品種技術
地上部の様子(左:コナヒメ、右:コナフブキ)
地上部の様子(左:コナヒメ、右:コナフブキ)

 

この記事は2016年12月1日に掲載された情報となります。

ホクレン 農業総合研究所 作物生産研究室 畑作物開発課

 

POINT!
早掘適性とジャガイモシストセンチュウ抵抗性を“合わせ”持つ多収品種!

 

1.はじめに

近年、北海道では、ジャガイモシストセンチュウ発生地域が拡大し、馬鈴しょ生産の永続性が懸念されています。しかし、現在作付されている馬鈴しょ品種の多くがジャガイモシストセンチュウに抵抗性がなく(感受性)、でん粉原料用として最も多く栽培されている「コナフブキ」も例外ではありません。

 

塊茎の様子
塊茎の様子

 

そのため、こうした品種に置き換わる抵抗性品種の開発と普及が重要な課題となっています。

ホクレン恵庭研究農場では、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持ち、高品質で収量性に優れたでん粉原料用品種を育成するため、平成15年から「コナフブキ」と他の系統との交配、選抜などを行いました。そして、新たに育成された品種が「コナヒメ」です。

 

表1.「コナヒメ※ 1」の生育および収量成績
表1.「コナヒメ※ 1」の生育および収量成績
※ 1「コナヒメ」は旧系統名「HP07」
※ 2「未達」は、収穫時に枯凋していなかったことを意味する。
※ 3 でん粉収量は、上いも収量×(でん粉価-1)で算出した。

平成28年に北海道優良品種の認定を受けたばかりですが、生産現場の緊急性に応えるため平成26年に品種登録を出願しており、平成29年から一般栽培が開始される予定です。

 

[表2]「コナヒメ」の早掘※ 1 収量成績   ( ホクレン恵庭研究農場 平成23~27年)
表2.「コナヒメ」の早掘※ 1 収量成績( ホクレン恵庭研究農場 平成23~27年)
※ 1 各試験年において、9 月1 日~ 3 日に収穫した。
※ 2 でん粉収量は、上いも収量×(でん粉価-1)で算出した。

 

2.「コナヒメ」の特性

① 形態的な特性

「コナフブキ」と比較すると、茎長は低く、草性はやや直立です。花の色は“白”で、花数は“中”となっています。また、開花後の結実果数はかなり少ない“微”で、塊茎の形は“短卵形”、肉色は“白”となっています。

 

② 収量や生態的な特性

「コナフブキ」と比較すると、枯ちょう期は同程度の“中晩生”です。収量は多く(図1)、でん粉価はやや低いですが、でん粉収量は多くなります(図2)

 

図1.「コナヒメ」の上いも収量
図1.「コナヒメ」の上いも収量

 

図2.「コナヒメ」のでん粉収量
図2.「コナヒメ」のでん粉収量

 

また、枯ちょう期だけでなく、約1カ月早い9月初めの早堀試験でも「コナフブキ」を上回る収量が得られています。なお、褐色心腐の発生は「コナフブキ」より多いですが、中心空洞の発生は同程度となっています。

 

③ 病害虫抵抗性

ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持っています。疫病の抵抗性は“強”で、塊茎腐敗抵抗性は“やや強”です。ジャガイモそうか病抵抗性およびY ウイルス病抵抗性は“弱”となっています。

 

④ でん粉品質特性

でん粉の灰分は「コナフブキ」より低く、白度は「コナフブキ」および「紅丸」より低い傾向がありますが、実製造ラインによる製造試験や加工ユーザーによる品質評価において、平成27年度の試験では問題がないことを確認しております。平成28年度も引き続き同様の試験を実施しております。

 

3.適地および栽培上の留意点

道内のでん粉原料用馬鈴しょ栽培地帯での作付に適しています。早掘適性があるので、秋播き小麦の前作として作付できます。疫病抵抗性を持っていますが、夏疫病には感受性(抵抗性がない)であるため、殺菌剤の散布は必要です。

また、「コナフブキ」と異なりY ウイルス病に感受性であることから、種いも栽培時の抜き取りには注意が必要です。なお、ウイルス罹病時には明確なモザイク症状を示します。褐色心腐の発生が多いため、でん粉原料用以外への用途転用には向きません。

(畑作物開発課 守屋明博)