この記事は2025年1月31日に掲載された情報となります。
安定多収を目指す第1歩は、株立本数が確保できるように播種することです。これは、圃場の状態や播種機の調整如何により大きく影響されます。斉一な出芽、均一な株間を得るために、圃場が播種床として適した状態となるよう砕土・整地するとともに、圃場の実態に応じた播種機の設定を選択しましょう!
播種に向けたポイント
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大切なのは、適正播種につながる機械メンテナンスと圃場管理!
POINT 1 冬場の機械メンテナンス
●播種機を冬場の間に整備し春作業に備えましょう。
●グリス・オイル関係や種子ホッパー内の清掃などに加え、以下のような播種精度に直結する部分も点検しましょう。
①各部品の摩耗度点検(播種板やディスク、セレクターやタイヤなど。必要あれば交換)
②ベルト・チェ—ンの張り具合
③播種ユニットの取付位置(ズレなどの調整)
④タイヤ圧
※部品の種類や点検箇所は播種機によって異なりますので、メーカーの取扱説明書でご確認下さい。
POINT 2 土づくりと播種床づくり
●トウモロコシは長大作物で肥料を多く必要とする作物です。土壌の腐植が豊富であると生育は安定し、十分な施肥により多収が期待できます。ただし、堆きゅう肥の過剰施用は、環境汚染や、作物中の栄養バランスを崩れさせる恐れがあります。また、施用量に応じて化学肥料を加減し、土壌養分の適正化に努めましょう。
●プラウ耕起を春に行う場合は、圃場が乾いている状態で行い、土壌の練り上げを避けます。
●耕起後は、砕土・整地前に土壌改良資材を適正量散布し、pH調整やリン酸の充足を目指しましょう。
●トウモロコシは、水分過多の状況下では低収を引き起こします。排水不良が見られる圃場は、サブソイラー等による改良を施しましょう。
●丁寧な砕土・整地により以下の効果が期待できます。
①種子と土の接触が高まり出芽が安定する
②干ばつ時の出芽不良が低減される
③播種床を均平にすることで、播種深度のバラつきを低減できると共に、土壌処理の除草剤の効果を最大限に引き出せる。
※播種床の仕上げ方は、播種機のタイプと合致する硬さであることが必要です。播種機メーカーにご確認下さい。
●草地跡で簡易耕起を行う場合は、前年秋季にグリホサート系除草剤で牧草を枯死させることを基本とし、草の塊やルートマットを十分に粉砕することが重要です。
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丁寧な砕土・整地の必要性
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大切なのは、適期になったら早めに播種
POINT 3 播種時期
●地温が10℃以上(平均気温が安定して10℃以上になる時期が目安です)。トウモロコシは温暖な地域原産の作物であり、播種後の低温や冷たい雨にあたるなどすると種子の発芽能力が急激に低下することがあります。播種後に低温が続くことが予想される場合は、作業日をずらすことも検討してください。
POINT 4 播種の設定調整
播種密度
●栽植本数は収量に直結するとともに、雌穂の登熟や耐倒伏性、雑草の繁茂などにも影響します。
●使用する品種の適正栽植本数に応じて、畝幅・株間を選択しましょう。ホクレン取扱品種の場合、早生種が8,000〜9,000本/10a、晩生種は7,000〜8,000本/10aです。種子のパンフレット等でご確認ください。
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大切なのは、圃場条件に応じた機械設定
施肥
●基肥窒素は7kg/10a以上で濃度障害による発芽遅延の恐れがあるため、施肥位置に留意が必要です。濃度障害の恐れがある場合には、分施も検討しましょう。
●深すぎ:出芽の揃いが悪くなり、個体の生育間差が発生する。特に低温・過湿時においては発芽に時間を要し、種子の活性が低下しやすい。
●3〜4cmが適正とされていますが、土壌水分が低い場合や、砕土が不十分な場合は、やや深め(〜5㎝)に播種します。
播種機の設定調整
●トウモロコシの種子は、大きいものから小さいもの、膨らみのない平たいものから厚みがあり丸いものなど、サイズ・形状が様々です。それらを考慮して播種機の設定を行う必要があります。
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種子のサイズ・形状と品種能力
種子のサイズ(大L〜小S)と形状(膨らみがない平種〜膨らみある丸種)は、実のどこに位置するかと採種時の生育状況によって決まります。同一の品種から得られる全ての子実は遺伝的に同一で、同じだけの収量をもたらす能力を持っています。
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大切なのは、種子のサイズ・形状による播種機の調整
●播種機の種子繰り出し構造のタイプによって設定対応が異なります。
各タイプの播種精度向上ポイント
【真空式】
●トウモロコシ用の播種ディスクを選択する。
●種子サイズに従い、種子フローやシードセレクターを調整する。
※多くの播種機はセレクターの開閉で播種板に一粒ずつ付くように調整可能。
●スプリングによる接地圧やハンドルで播種深度を調整する。
【目皿式】
●種子のサイズ・形状に応じ適切な播種板とギヤの調節で落下数を調整する。※トウモロコシでは通常、厚みの薄い播種板が使用される(播種穴における種子の重なり解消による播種の安定化)。ただ傾斜地では種子こぼれのデメリットがあるため、厚みのあるものを利用。
【フィンガーピック式】
●種子のサイズ・形状は問わない。
●フィンガーテンションを調節する。
●ブラシやベルトの摩耗・損傷有無を点検・交換する。
●メーカー推奨の潤滑剤(カーボン)を使用する。
●販売されている種子袋には、サイズ・形状の情報や、目皿式の播種板の穴径について明記されていることがあります。
●ホクレン取扱飼料用トウモロコシ種子については、サイズ<S(小)・M(中)・L(大)>、形状<F(平)・R(丸)>、目皿式での穴径について表示しています。※穴径情報は、10穴の播種板を用いて、推奨走行速度4㎞/hの条件下での落下数100を切らないサイズを採用。特定条件下での落下数をもとにしたものであり、あくまで目安となります。
●播種板の厚さや穴数、走行速度によって落下数は変動します。種子繰り出し部分は、タイヤ(駆動タイヤや接地タイヤ)の回転で動くため、タイヤや圃場の状態に応じたスリップ率(タイヤの回転率)によっても落下数は変動します。
●いずれのタイプの播種機であっても、必ず試験走行を行い、種子の落下状況を確認しましょう。
POINT 5 鎮圧
●鎮圧機能を備えていない播種機の場合、播種後に別途軽めに鎮圧することが種子の発芽促進に有効な場合もあります。
●ただし、過剰な鎮圧や降雨後の鎮圧は発芽不良を招く恐れがあるため避けます。
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トウモロコシ播種作業のポイント
●試験走行し、種子の落下間隔(株間、欠株・2粒落ちの有無)や播種深度、施肥位置が適正かどうかを確認し、適正な位置や深さになるよう播種機を調整しましょう。種子の種類が変わる毎に行いましょう。
●また、圃場により播種床の状況が異なることから、圃場が変わったタイミングにおいても、必要な場面では都度、調整を検討してください。
●圃場内の残渣物による隙間が生じていないかや、播種ユニット間で種子の減り具合に差がないかも点検しましょう。
●均一な播種のため、播種機のスピードを上げすぎないようにしましょう。