草地更新・草地管理編

キーワード:施肥自給飼料除草剤
この記事は2024年7月19日に掲載された情報となります。

1番牧草の収穫は、現状を把握し、夏から越冬前にかけての圃場管理や更新計画を検討する機会。この時期に知って欲しい更新や管理のポイントをご紹介します。

草地更新・草地管理のポイント

  • 必要な措置を圃場毎に検討!

POINT 1  圃場の状況把握と考察

●1番草の収穫量から圃場の生産性がある程度把握されます。

●生産性に加えて、牧草割合、雑草の種類と割合などをもとに施肥改善や更新の有無を、時系列(年内実施、中長期的)に分けて検討しましょう。

 

草地の現状把握を踏まえた対応方法例

表1採草地における植生改善マニュアル北海道自給飼料改善協議会(H25.3)一部改
表1.採草地における植生改善マニュアル 北海道自給飼料改善協議会(H25.3)一部改

 

POINT 2  施肥

●生産性の低い圃場は、土壌環境が悪化している可 能性があります。土壌診断を行い施肥改善や更新の必要性有無を確認しましょう。

●1番草刈取後の施肥は、茎数密度を増やすために 重要です。(※特にチモシーの場合。オーチャードグラスは最終刈取直後の秋施肥の影響が大きい)次年度以降への先行投資としても実施を検討してください。

●施肥量は施肥配分を参考にしましょう。

チモシー2回刈〜早春:1番草後=2:1

チモシー3回刈〜早春:1番草後:2番草後=3:2:1

オーチャードグラス3回刈〜早春:1番草後:2番草後:秋施肥=1:1:0.7:0.3

●草地のマメ科割合に応じた施肥を行うことで、良好な牧草の維持・定着が図れます。

 

表2チモシー採草地における施肥標準量
表2.チモシー採草地における施肥標準量(北海道施肥ガイド2020)
※道東・火山性土の例。地帯区分13〜18
マメ科率により窒素必要量が大きく異なります。

 

POINT 3  除草剤

●地下茎型イネ科雑草の多少は、更新判断の重要なポ イントとなります。70%以上は、非選択性除草剤+完全更新が推奨されます。

●1番草収穫前にギシギシを除草剤で処理できなかった 圃場では、2番草収穫前までに処理しましょう。

※ギシギシは1番草と2番草の間に種子が登熟する。

※ただし、この時期は気温が高く、薬害が発生する可能性があります。そのため、実施の是非含め、散布時期や薬量について細心の注意が必要です。

POINT 4  エアレーションや排水性の改善

●締まった圃場は通気性が悪くなるとともに肥料の効きも低下し、牧草の生育に悪影響を及ぼします。また、排水不良はどのような作物であってもマイナスの要素です。

●草地に穴やナイフでカットを入れて通気性を改善させるエアレーションや排水不良を改善するサブソイラー等による施工は、最終番草収穫後の秋口が一般的です。1番草時の圃場の状態から、実施する圃場を事前に選定しておきましょう。

POINT 5  簡易更新による植生改善

●前年更新した圃場の補修など、播種することで生産性を向上できる場合があります。

●ブロキャス等で牧草種子を散布、または作溝式などの専用の機械を使用して播種します。放牧地の場合は、種子散布後に家畜に種子を踏ませる方法も有効です。

●播種するだけでは改善が難しい草地は、表層攪拌法を用いた植生改善をご検討ください。ロータリーハローやディスクハローで草地表層を攪拌・砕土して、整地後に播種します。表層の肥沃な土壌養分を生かすことができ、作溝式では期待できない草地表層の土壌改良が行えます。
なお、地下茎型イネ科雑草が30〜50%である場合は、強めの攪拌で対応し、それ以上では非選択性除草剤を利用ください。

 

写真1牧草用簡易更新機
写真1.牧草用簡易更新機

気象の高温干ばつ注意

 

POINT 6  完全更新

●特に土壌の物理性・化学性が著しく悪化している圃場については、完全更新をご検討ください。並行して 地下茎イネ科雑草の優占度合いを見ながら非選択性除草剤の必要性をご確認ください。

●非選択性除草剤を2回実施する体系処理については、1番草を早く刈れば、年内全て実施することも可能ですが、スケジュール的にはタイトとなるため、2回目は翌年に持ち越すなど慎重に判断しましょう。

 

Pickup 簡易更新に向く草種

草地表面で土壌を露出させずに作溝機などで播種する場合は、初期生育が旺盛な草種の方が安定して定着します。

●イネ科牧草ではペレニアルライグラスやオーチャードグラス、マメ科牧草ではクローバ類。特にアカクローバは初期生育良好で、タンパク質含量の向上に寄与します。

表3簡易更新の播種量
表3.簡易更新の播種量

 

写真2. 追播後の様子