2023年産1番草(生草)の特徴と対応方法

キーワード:牧草牧草生産自給飼料酪畜

2023年産1番草の特徴と対応方法

2023年の1番草は安定した食い込みが期待されます。気候、収穫時期、栄養成分などから、今年の1番草の特徴と注意点を解説します。

この記事は2023年10月23日に掲載された情報となります。

ホクレン 畜産生産部 生産技術課

❶収穫時期

今年の5月は例年に比べ降水量が少なく、5月後半で牧草の生育がやや停滞した地域もありました(表1)。

しかし、6月に入るとすぐに全道的にまとまった降雨があり、牧草の生育も進みました。チモシーの収穫適期となる6月10日以降は安定した天候が続き、収穫作業が順調に進みました(図1)。

その結果、6月末時点での1番草の収穫進捗(しんちょく)は77%となり、昨年の48%を大きく上回りました(※1)。

※1 農作物生育状況調査(調査基準日:7月1日)北海道農政部より
表1.5月の月間降水量 (単位:㎜/月)
表1.5月の月間降水量 (単位:㎜/月)

 

図1.2023年5~6月地区別日照時間と日降水量
図1.2023年5~6月地区別日照時間と日降水量

 

❷栄養成分

栄養価の推移を見ると、早い時期からの栄養低下が伺えます(図2)。これは6月の気温が平年に比べて高く(表2)、牧草の生育(繊維化)が早く進んだためと考えられます。

一方、収穫作業も平年より1週間早く進みました(※1)。そのため、栄養低下の影響は小さいと想定されます。事実、NDF(※2)が高い牧草(NDF70%以上)の割合は昨年と比較して少なくなっています(図3)。

※1 農作物生育状況調査(調査基準日:7月1日)北海道農政部より
※2  中性デタージェント繊維
図2.収穫時期と栄養成分(CP・NDF)の推移
図2.収穫時期と栄養成分(CP・NDF)の推移

 

表2. 6月の平均気温 (単位:℃)
表2. 6月の平均気温 (単位:℃)

 

図3. NDFの分布割合
図3. NDFの分布割合

 

❸食い込めるサイレージに期待

昨年は収穫時期に雨が続いたため、高水分でのサイレージ調製を余儀なくされ、発酵品質が低下したサイレージが多くなりました。

発酵品質が低下したサイレージは牛の健康に悪影響をもたらすだけでなく、乾物摂取量の低下も招きます。そのため、ビートパルプを増給するなどの対応が必要になった農場も多かったと思います。

一方、今年は収穫時に雨にあたることも少なく、高水分の牧草の割合は昨年と比較して大きく減少しました(図4)。

今年は発酵品質の良い食い込めるサイレージが期待できることから、ビートパルプの給与量を減らすなど購入飼料を抑えられる可能性があります。

図4. 水分の分布割合
図4. 水分の分布割合

 

❹カビに注意

今年の1番草について一つ注意してほしい点があります。それは「サイレージのカビ」です。水分の推移を見ると、特に6月下旬以降で牧草の水分が70%以下と低くなっています(図5)。

サイレージ調製時に牧草が乾き過ぎると、十分に踏圧がかからず、サイロ内に空気が残ってしまい、カビの発生リスクが高まります。もしサイロを開封した際にカビがあれば、できる限りカビとその周辺を取り除くことが大切です。

ただ、全体的にカビが散在するなど、除去しきれない場合はカビ毒吸着材を使用することをお勧めします。サイロにカビが見られたり、牛にカビ毒の症状が出たりした場合は、すぐにJAまたはホクレンの担当者にご連絡ください。

●カビ毒の症状
①透明な鼻水 ②採食量・乳量の低下 ③水様下痢 ④受胎後の再発情・流産 ⑤乳房炎の増加 ⑥出血性腸炎(HBS)など

図5. 収穫時期と水分の推移
図5. 収穫時期と水分の推移

 

※図2〜5はホクレンくみあい飼料粗飼料分析センターで分析した生草データを集計