乳牛を暑熱ストレスから守る

キーワード:換気暑さ対策牛舎

乳牛を暑熱ストレスから守る

牛は寒さよりも暑さに弱い生き物です。夏場は食欲が低下して体力も落ち、病気になりやすくなります。暑熱ストレスを少しでも軽減できるよう、快適な環境づくりに気を配りましょう。

この記事は2022年6月1日に掲載された情報になります。

北海道農政部生産振興局 技術普及課 総括普及指導員 横山 優さん

北海道農政部生産振興局 技術普及課 総括普及指導員
横山 優さん

10 換気を徹底、快適な牛舎へ

牛は暑さに弱く気温が20℃を超えるとストレスを感じるといわれています。気温の高い日は日よけやすだれで直射日光を遮るとともに、牛舎内の窓やカーテンを開けて十分な換気を心掛けてください。気温が高くても風通しが良くなると牛の体感温度を下げられるからです。牛舎全体に空気の流れをつくるトンネル換気のほか、大型扇風機による送風、細霧システムによる気化熱での放散など、さまざまな方法を活用して牛舎内温度の上昇を抑えましょう(写真9)。

牛は暑さでダメージを受けると食べる餌の量が減り、乳量や乳成分が低下します。肝機能が弱り、繁殖成績が落ちるなど、悪影響が長引くことも少なくありません。最悪の場合、死廃事故を招くこともあります。食べる量は減っていないか、水は足りているかといった牛の健康状態を日頃からよく観察。体調の変化を見逃すことなく、早め早めの対策で暑熱ストレスの影響を最小限に抑えましょう。

 

写真9.牛舎内部ファン
写真9.牛舎内部ファン
写真10.トンネル換気
写真10.トンネル換気

 

写真11.水槽
写真11.水槽

11 衛生管理と環境整備を念入りに

暑い日が続くと牛の免疫力が低下する一方で、牛舎内は雑菌が繁殖しやすく、乳房炎が増加します。正しい搾乳手順を守り、乳房・乳頭を清潔に保って病気の発生を予防しましょう。

感染症を媒介するサシバエの大量発生にも注意が必要です。幼虫(ウジ)の段階で退治できるよう、牛舎の掃除や牛舎周辺の草刈りを念入りに行ってください。

水槽や飼槽の汚れにも気を付けて、こまめな掃除を意識しましょう(写真11)。暑い時期はサイレージも傷みやすいので、空気に触れる箇所が少なくなるように取り出すなど、丁寧な取り扱いを心掛けます。こうした徹底した衛生管理が採食量の低下を防ぎ、牛を夏バテから守ります。