農業労働力不足対策への取り組み

キーワード:タイストールホクレン訓子府実証農場搾乳牛舎省力化
図1.九州からの参加者を募ったチラシ
図1.九州からの参加者を募ったチラシ
この記事は2023年10月1日に掲載された情報となります。

カテゴリー:労働力不足対応
実施年度:2022年度
対象:JA新おたる・JA道央
実施:倶知安支所・札幌支所・北見支所営農支援室
協力関係機関:【産地間連携】JA全農ふくれん・株式会社菜果野アグリ・株式会社JTB北海道・【自衛官農業紹介】自衛隊札幌地方協力本部・自衛隊美幌駐屯地・自衛隊遠軽駐屯地・石狩振興局他

 

POINT
●産地間連携による「収穫プログラム」で九州から北海道へ労働力を移動
●さまざまな人材確保のため退職予定自衛官向けのインターンシップや説明会を実施

 

産地間連携の取り組み

JA新おたるの産地間連携

JA新おたるの主要作物、トマト・ミニトマトの最盛期は8月から9月に集中。雇用期間が短いこともあって、パート募集をしても労働力確保が難しい状況にあります。これまでは外国人労働者に依存してきましたが、新型コロナウイルスの影響により入国が制限され、労働力の確保が困難となりました。

そこで活用されたのが農林水産省の補助事業「農業労働力産地間連携等推進事業※」。これにより、繁閑期が異なる九州(福岡・大分)の労働人材に「北海道ミニトマト収穫プログラム」への参加募集をしました。

九州での募集はJA全農ふくれんと連携し、地域で実績のある「菜果野アグリ」(大分市)の協力を得て6月〜7月上旬に開始し、九州からの移動等に関しては株式会社JTBの協力を得ました。

JA新おたるでは生産者に「農業労働力調査」を実施。調査結果を踏まえ、10戸の生産者が産地間連携の取り組みに協力しました。

生産者の皆さんには九州から来た方々とスムーズに作業を進めていただくために「働き方改革セミナーおよび本取り組み説明会」を実施してトラブルを未然に防ぐよう配慮しました。

九州では、募集チラシを配布(図1)。募集内容は8月中旬〜9月上旬を3クールに分け、1クール当たり16〜17名を8泊9日(移動日と休日を除き6日間労働)で雇用するというものでした。

雇用契約は株式会社JTBと結び、作業内容は1日7時間ミニトマトの収穫や枝葉の剪定(せんてい)。結果として大学生を中心に45名の方に参加していただきました(写真1・2)。

参加者からは「猛暑の続く九州と比べ、北海道は涼しく作業がしやすい」、受け入れ生産者からは「収穫時期は人手が足りないので助かった」と感謝する声が挙がりました。

写真1.生産者と参加者の顔合わせ風景
写真1.生産者と参加者の顔合わせ風景
写真2..参加者のミニトマト収穫風景
写真2..参加者のミニトマト収穫風景

2023年度の産地間連携

2023年度の取り組みでは、JA全農ふくれんと連携し株式会社JTBが「北海道ミニトマト収穫プログラム」を継続。新たに農協観光とも協力し「JA援農支援隊 夏の仁木町でミニトマト収穫14日間」の実施に取り組むことになりました。

その他、JA新おたるとJA全農ふくれんとの間で、現在JA新おたるに来ている「特定技能実習生」を4月〜10月までは新おたるで、11月〜翌年3月までは、九州で働くような産地間連携についても協議を進めています。

退職予定自衛官に農業を紹介

自衛隊では定年が55歳(2023年10月以降は56歳)です。また、退職予定自衛官の多くは駐屯地近郊に住居を構えており、通勤圏内であれば、農業分野への就労は可能です。

これまで農業分野は退職予定自衛官の再雇用先として案内する機会が少なく、今後は農業分野への就業を推進できるよう自衛隊駐屯地とのパイプを構築。退職予定者向けに農業研修を実施しました。ここでは美幌、遠軽、札幌の例をご紹介します。

●美幌駐屯地…以前から再雇用先として農業分野を紹介していたこともあり、前向きな取り組みとなっています。北海道農政事務所や振興局などと連携し、2021年から業務紹介やインターンシップを実施しています(写真3)。

写真3.インターンシップでの馬鈴しょ選別(津別町)
写真3.インターンシップでの馬鈴しょ選別(津別町)

●遠軽駐屯地…振興局と連携し、2022年から取り組みを開始しており、過去に、酪農ヘルパーとして就農された方もいます。2023年は7月に旭川で開催された合同企業説明会のガイドブックにオホーツク管内3JAを紹介しました。

●札幌地方協力本部…自衛隊と意見交換を実施。自衛隊から「農業分野は再就職先として希望者が多いけれど情報が少なく漠然としたイメージしかない。インターンシップを通じて学ぶ機会を作っていただきたい」との要望があり、千歳市や長沼町でインターンシップを実施しました(写真4)。

写真4.インターンシップでのてん菜収穫(長沼町)
写真4.インターンシップでのてん菜収穫(長沼町)