この記事は2018年8月1日に掲載された情報となります。
道総研 畜産試験場 家畜研究部
技術支援グループ 主査 渡部 敢さん
Profile:帯広畜産大学卒業。滝川畜産試験場、畜産試験場、十勝農業試験場などを経て平成28年4月から現職。
POINT!
❶ハルガヤは種子の生産が早く、その量も非常に多い雑草です。
❷とうもろこし等の作付けによる埋土種子のクリーンアップや、播種当年に種子を落とさせないようグリホサート系除草剤で体系処理後の草地更新が効果的です。
近年、道央・道南および道北地域を中心とした草地にハルガヤが侵入し(図1)、対策に苦慮しています。そこで、ハルガヤの特性を調査し対策をまとめました。
根絶が難しいハルガヤの特徴
ハルガヤは5月初めから長期間出穂し、出穂後10日前後で開花、その4週後の6月初めには種子を生産します。
種子量は約10万粒/㎡と非常に多く、種子を生産する前(5月末)に刈り取っても遅れ穂が出て、40日後には種子ができるので、種子が落ちないよう管理するのは困難です。
また、土壌表面に近い種子はすぐに出芽しますが、土中1〜5㎝深の種子は2〜3年後も出芽します。15㎝の深さに埋めた種子は、24カ月後でも初期の5〜6割の発芽率で長期間死滅しません。
このように、ハルガヤは種子生産が非常に早くて量も多く、土に埋まった種子の出芽も長期にわたるので、短期的な根絶は難しく、草地更新後も再発生のリスクがある雑草です。
また、低pHを好み、耐凍性はチモシー(TY)、オーチャードグラス(OG)より低く、ペレニアルライグラス(PR)と同程度です。競合力はTYより強く、OGやPRより弱いこともわかりました。草丈は80㎝程度と低く、低収量です。
ハルガヤを減らす対策
草地更新時に可能な限りハルガヤの侵入を抑え、その後の増加を抑えるため、最も効果があるのは、他作物を作付け(輪作)し選択性除草剤の活用で埋土種子をクリーンアップすることです。
飼料用とうもろこしを作付けする場合、ゲザプリムフロアブルでの茎葉処理がハルガヤの実生に効果がありました(写真1)。とうもろこしを数年作付けし、ハルガヤの実生発生がなくなってから草地更新します。
他作物の作付けができない場合の更新は、
①前植生処理は前年秋〜当年5月までに実施し、播種年にハルガヤの種子をつけさせないこと
②埋土種子対策として播種床の処理を行うこと
③適期・適正に播種して裸地を作らないこと
が重要で、春夏体系処理と秋夏体系処理があります(表1)。
再発生のリスクが残るので、更新草種として競合力の強いOGなどを作付けするのも有効です。
また、ハルガヤは施肥量が少ないと増加する傾向があり、特にTY草地で顕著です。主体草種の衰退や裸地の発生でも増加するので適正な施肥を心がけます。
拡大防止のため、ハルガヤ侵入圃場を収穫した後は作業機の清掃を実施します。ハルガヤ種子は風による飛散も報告されているので、圃場周辺のハルガヤは結実前に刈り倒し、草地への種子混入を予防します。
なお、これらをまとめた「草地雑草『ハルガヤ』の低減対策」(写真2)を、道総研畜産試験場のHPで公開しています。