「安全」は「経営」であり「生活」 農作業事故を減らしたい

キーワード:あの人のビューポイント農作業事故農研機構

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) 農業技術革新工学研究センター 安全工学研究領域安全技術ユニット ユニット長 積 栄

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
農業技術革新工学研究センター 安全工学研究領域安全技術ユニット ユニット長
積 栄

この記事は2021年2月1日に掲載された情報となります。

私の仕事は、農作業の安全性を高め、事故を未然に防ぐための方策を考え、フィードバックすること。

農作業事故を起こした当事者の方に会ってお話を聞き、原因を分析しデータとして蓄積しています。

農業は他と比べて事故が多い産業です。

家族経営が多く、一般企業のように安全管理を専門に行う人はいません。

安全に対する取り組みは、直接収益につながるものではないため、後回しにされやすいということも事実です。

しかし、一度大きな事故が起これば、重要な労働力を失ったり、離農につながるなど、その影響は計り知れません。

「安全」は「経営」であり「生活」なのです。

実際に事故を起こした方は、必ずと言っていいほど「自分が悪かった」「あの時はどうかしていた」と自分のせいにしますが、事前に情報があれば多くの事故は防ぐことができると思います。

北海道は、1戸当たりの作付面積が本州に比べると大きく、地域によって作目に違いがあります。

ひと口に「収穫時の機械事故」と言っても、内容や原因はさまざま。

個々の事故原因を突き止め、「うっかり」があっても事故にならないよう対策することが大事です。

そのためには、 JAや行政、そして地域の方の協力や問題意識の共有などが不可欠ですが、北海道の方は安全に対する意識がとても高いと感じています。

労災への加入率は6割と高く、事故調査にも協力的で、講習会では皆さん真剣に聞いてくださいます。

だからこそしっかり対策を行って、事故を減らし、全国を引っぱる存在になれると思っています。

農業の安全に関する取り組みは、成果が見えづらいですが諦めてはいけません。

これからも農家の方々の安全のため、現場で何が起きているのか自分の目で確かめ、皆さんにお伝えしていきたいと思います。

Profile
1974(昭和49)年、埼玉県生まれ。東京農工大学大学院で農業機械と精密農業の研究を行い、卒業後の2000年に現在の農研機構に入所。入所後は農業機械を中心に農作業安全に関する研究等を担当。現在は、農作業安全対策や農業機械の安全性評価に向けた事故調査と分析、農作業事故の減少に向けた講演や啓発活動を行いながら全国を飛び回っている。埼玉県在住。

農作業の安全についての詳細は農研機構Webサイト「農作業安全情報センター」でご確認ください。

農研機構HP

http://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/anzenweb/