同業者同士が成長しあう農村コミュニティを

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同業者同士が成長しあう 農村コミュニティを

北海道農業士協会
会長 稲村 英樹さん

 

Profile:1974(昭和49)年、当別町生まれ。酪農学園大学卒業後、販売職を経て1999(平成11)年に実家のいなむら農場に就農。2018(平成30)年に事業を継承して、稲作の四代目生産者として活躍中。北海道農業士協会会長、石狩地区指導農業士・農業士会副会長。米・食味鑑定士やお米アドバイザーの資格も持ち、道産米の普及にも一役買っている。(自宅前の水田にて撮影)

 

この記事は2018年8月1日に掲載された情報となります。

 

自分は農家の長男坊なので就農は自然に考えていましたが、その前に「スーツを着て働く経験を」と思い、紳士服の販売を2年間経験しました。今思えば、この時の経験がとても大きかったですね。

販売職はひたすら売る技術を磨きますが、農家は自分で何をどれくらい作り、誰にどうやって売るかまでを総合的に考えるので、経営方法が無限にある。

しかも収穫は年に一度ですから、「今年は育苗の方法を変えてみるか」というトライ&エラーのチャンスも一度きり。毎年「次はこうしてみよう」という課題が出てきて、勉強とチャレンジの繰り返しです。

新規就農者の皆さんにとって、指導農業士が「先生」だとしたら、農業士は「相談相手」のような存在です。「困ったことがあったら何でも言って」と声をかけ、まだ経験の浅い皆さんが行き詰まってしまわないようにフォローしています。

私たち農業士が目指す農村生活の向上、すなわちコミュニティづくりの大前提は「そこに人がいること」です。たとえその日の売り上げに直接つながらなくても、皆で力を合わせて地域を存続させていく。

そのためにも同業者の存在は必要不可欠であり、新規就農者との接点を更に増やして、これからも支援に力を入れていきたいです。

地元を活性化するには、他の地域に目を向けることも大切です。日々の作業に追われたままだと、隣町の生産者がどんな取り組みをしているかということも見落としがちです。

今後は互いに胸を開いて情報を交換し、いいと思うことは導入する事例が増えてほしい。それが地域還元であり、互いに成長できる農村コミュニティの姿だと考えています。