農業経営の基礎講座 Lesson04

経営のクセに気付くことが大切

キーワード:経営改善農業経営

経営のクセに気付くことが大切

岩見沢市 北村
豊里農業経営活性化協議会
経営部会

「豊里の経営部会は所得向上を目指して切磋琢磨しているのが素晴らしい」
同じ地域の仲間と比較することで自分の弱点を発見できる

 

この記事は2018年12月1日に掲載された情報となります。

 

生産者が「経営部会」を組織し、地域が一体となって経営改善を目指している岩見沢市北村の豊里農業経営活性化協議会。どのような方法で実践しているのか、取材しました。

 

Case Study 地域全体で経営改善

自分のクセに気づくことから

岩見沢市北村の豊里地区で「農業経営活性化協議会」が設立されたのは今から20年前。米だけに依存せず、麦や大豆を導入して「空知型輪作体系」を確立するのが目的でした。

当初は技術向上のための活動が中心でしたが、11年前に「経営部会」が誕生。経営改善を図る取り組みがスタートしました。

「メンバーの経営情報を集約し、地域の標準と比べて収量が多いのか、経費を掛けすぎなのか、まずは自分のクセに気づいてもらうことから始めました」と話すのは、同協議会の会長を務める伊藤浩光さん。「財布の中身をみんなに見せるようなものですから、最初は抵抗ありましたよ」と打ち明けます。

 

地域の平均値と比較

経営部会のメンバーは毎年12月に集まり、品目別に収量とかかった経費(資材・農薬・肥料など)を中央農試が開発したエクセルファイルに入力します。このファイルは簡単に入力できるよう工夫されたもの。中央農試の生産システムグループがこのデータを分析して、3月に報告会を行います(図1)。

 

図1.経営情報共有化の流れ
図1.経営情報共有化の流れ

 

分析結果の報告書では、品目別に費用の平均値とメンバーの実数値が分かりやすく分布グラフに整理されています(図2)。個人名は出ませんが、本人は自分の位置づけがひと目で分かる仕組みです。

 

図2.分布グラフの例
図2.分布グラフの例:大豆の農薬費の特徴
縦軸は製品単収(kg/10a)、横軸は10a当たり農薬費(千円/10a)
○印は経営部会メンバーの分布。十字の真ん中が平均値。四分割された左上は収量が多く経費が少ない優良な経営。右下は収量が少なく経費が多いので栽培方法などの改善を行うことで優良経営に近づけていく。

 

「収量は標準以上だけれど人より余計に経費がかかっているとか、小麦はいいけど大豆は苦手、肥料に金をかけすぎているなど、経営のクセがはっきり把握できます」と伊藤さん。一人よがりになりがちな経営を客観的に捉えられます。

 

地域全体で所得の向上を

自分の経営の弱点が明らかになったら、稲作部会や畑作部会などであらためて適正な管理を学び、営農計画にも反映させて、経営の改善を目指します。年を重ねるごとに生産技術が平準化し、地域全体のレベルアップにもつながりました。

また、経営部会の分析結果で、機械や設備投資の負担が経営を圧迫していることが明確になり、地域ぐるみでコスト低減の話し合いも活発化しました。機械の共同利用はもちろん、収穫や乾燥作業を受託する法人が設立されるなど、経営のあり方を見直す取り組みもさかんになりました。

ここ数年は経営分析の必要性への理解が広がり、近隣の赤川地区、豊正地区とも連携。地区ごとの違いも分析して公開するなど、活動は広がっています。今後は収穫作業の受託の際、単収のデータを活用して刈り取りの日程を決めるなど、まだまだ活動ができそうです。

 

参加は強制しないこと

豊里地域のような取り組みはどのように始めればいいのでしょう。伊藤さんは「生産者だけではなく、農協や普及センターや試験場など関係機関を巻き込んで始めることが大事」と強調します。

また「償還金などは度外視して単年度の収入と経費で考える」「最初から細かい数値の入力を要求せず段階を踏んでいく」「参加を強制しない」こともポイントとのこと。

JAいわみざわの中道克己さんは「コンサルティングは経営が悪化した場合にするのが一般的ですが、豊里の経営部会は所得向上を目指して日ごろから切磋琢磨しているのが素晴らしい」と賞賛するとともに「協議会を通じて若手からベテランまで活発にコミュニケーションできる風土があるのは、後継者なども心強いはず」と話しています。

 

豊里農業経営活性化協議会の勉強会。

豊里農業経営活性化協議会の勉強会。

豊里農業経営活性化協議会の勉強会。
豊里農業経営活性化協議会の勉強会。メンバーはグループLINEを使って密に連絡をとっています。

 

Lesson04まとめ

●地域で経営状況を共有すると自分の経営の弱点がわかる
●弱点は各部会の活動で学び改善を図る
●地域ぐるみのコスト低減につなげる