建設現場での安全対策

キーワード:農作業事故
朝礼の様子 毎朝、前日の安全工程打ち合わせで出た内容を共有します。
写真1. 朝礼の様子 毎朝、前日の安全工程打ち合わせで出た内容を共有します。

建設現場ではどのような安全対策を講じているのでしょうか。岩田地崎建設ほか数社のJV(共同企業体)で行われている苗穂駅前再開発(札幌市中央区)の工事現場を見学させてもらいました。

この記事は2021年8月1日に掲載された情報となります。

岩田地崎建設株式会社 苗穂駅前再開発 統括所長 経塚 史洋さん

岩田地崎建設株式会社
苗穂駅前再開発 統括所長 経塚 史洋さん

岩田地崎建設株式会社 苗穂駅前再開発 統括副所長 松本 啓さん

岩田地崎建設株式会社
苗穂駅前再開発 統括副所長 松本 啓さん

KY(危険予知)の力を付ける

「建設現場で発生頻度が高いのは、墜落・転落、転倒、電動工具等による切れ・こすれなど。なかでも怖いのは、死亡災害につながる場合もある墜落・転落です」

こう話すのは工事現場全体を管理する統括所長の経塚史洋さん。工事現場での安全対策について、詳しく教えてくれました。

工事現場の日は全員を集めた朝礼(写真1)からスタートします。

まず、その日の人員と作業の段取りを皆で共有。さまざまな工種の業者が混在しているため、その後は業者ごとに分かれてK‌Yミーティング(写真2)を行います。

KYミーティングの様子
写真2. KYミーティングの様子

K‌Yとは危険予知の略で、その日の作業にどんな危険があるかを洗い出し、対策についても話し合います。更に各職種の職長が集まり手順を確認。重機の安全点検を行ってから「作業計画書」に基づいてようやく現場が動き始めます。所長はルール通りに作業が行われているか、巡回パトロールを実施します。

大勢が関わるため、規定もさまざま用意されていますが、危険を想定してから作業に取り掛かるK‌Y活動なら農業者もすぐに取り入れることができそうです。

作業計画書
作業計画書
作業で使う重機の作業計画を作成。立入禁止を図で示すほか、作業に伴う危険を洗い出し、その対策も記入。始業前点検の結果も記録します。

社独自の安全運動も多彩

岩田地崎建設では現場で毎月開催する「災害防止協議会」や現場独自の取り組みのほかにも、過去に発生した災害事例をデータベース化して類似工事に参照できるようにしたり、幅広い安全対策を実施しています。次の三つは現在、同社が力を入れている運動です。

①D‌o i‌t now(今やろう)運動
他現場で災害が起きた場合、自分たちならどうするかを考え、すぐに対策する取り組みです。

②ヒヤリハット情報共有運動
災害には至らなくてもヒヤリとしたりハッとしたりした事例をK‌Yミーティングで報告。災害防止協議会で取りまとめて対策します。

③コミパト運動
職長グループが作業員へ声掛けしながら巡視するコミュニケーションパトロール。気付いた点は災害防止協議会で共有します。

「参加型の安全対策を工夫して、危険に対する感受性を高めることが重要」と経塚所長。「建設業では業界団体で安全大会を盛んに開催しています。農業でも業界全体で安全意識を高める行事を増やしていけば、効果があるのでは」と提案してくれました。


建設現場で行われている、安全対策例

可搬式作業台(立馬)

可搬式作業台(立馬)
トラックの荷台からの転落を防ぐために使用しているのが、可搬式作業台(立馬)。荷台の横につけて昇降に使います。1mの高低差でも死亡事故が起きるので「1メートルは一命取る」と標語で安全教育しています。

巻き込み事故への注意

巻き込み事故への注意
重機には死角があるので、巻き込み事故が起きないように注意喚起。旋回時に接触しないよう、距離を確保する安全バーを装着しています。始業前にはブレーキ、タイヤ、エンジンなどをチェックリストで点検します。

作業導線の確保

作業導線の確保
現場では通路の部分をスプレーで地面に書いています。コーンで仕切るなどして、通路には資材を置かないよう徹底します。段差の解消が難しいときは「段差注意」と朱書きして注意喚起します。

つまずきなどの事故防止

つまずきなどの事故防止
低い場所の突起物には目立つピンクのリボンをつけ、つまずきを防止。転んでも刺さったりしないよう、鉄筋は先が逆Uの字に曲がったものを使っています。

ワイヤーロープ定期点検

ワイヤーロープ定期点検
ワイヤーロープ定期点検
ワイヤーロープは点検者を決め定期的にチェック。毎月点検後に貼るテープの色を決め、安全帯や玉掛けには点検済みのものを使います。

安全な服装を確認

安全な服装を確認
現場の入口には服装のセルフチェックができる看板を設置。ヘルメットや安全靴はもちろん、高さ2m以上の作業では安全帯(墜落制止用器具)の装着が義務付けられています。

熱中症対策

熱中症対策
熱中症の危険度を分かりやすく表示しているほか、休憩室にはウォーターサーバーや塩飴を常備し、エアコンを設置。屋外ならタープで日陰をつくったり、ミストシャワーを設置することもあります。

緊急事態への対応を告知

緊急事態への対応を告知
災害が発生した場合、どこに連絡するかを定めた「緊急事態対応表」。病院はもちろん警察や労働基準監督署など関係機関の多さを可視化することで、安全意識を高めます。