05肥料の原料調達

肥料はこの先どうなるの?

キーワード:ホクレン肥料農薬部肥料肥料コスト削減肥料価格
写真3釧路港まで肥料を運ぶヨルダン船(2023年9月)
写真3.釧路港まで肥料を運ぶヨルダン船(2023年9月)

 

この記事は2025年2月3日に掲載された情報となります。

ホクレン肥料農薬部肥料原料課中川健太郎課長補佐-

ホクレン肥料農薬部 肥料原料課
中川 健太郎 課長補佐

 

化学肥料の主な原料となる鉱物資源は日本で採掘できず、ごく一部を除き、輸入に頼っています。今後はどうなるのでしょう。

 

Q.肥料の価格が高騰したのはなぜ?

 

A.国際価格や為替に大きく影響を受けます。

 

2021年後半以降、 肥料原料の国際価格は大きく高騰しました。その要因として、 穀物相場の上昇による肥料需要の増加と合わせて、中国による肥料原料の実質的な輸出規制、およびウクライナ侵攻に対するロシア・ベラルーシへの経済制裁による両国からの輸出停滞などで、世界の需給バランスが崩れたことが挙げられます。

また、2022年以降の急激な円安の進行も、化学肥料の大半を輸入に依存している日本としては価格上昇の㆒因となりました。

 

図9肥料原料の輸⼊通関価格の動向
図9.肥料原料の輸⼊通関価格の動向※3
財務省貿易統計における各月の輸入量と輸入額をもとに、農林水産省において作成。月当たりの輸入量が5,000t台以下の月は前月の価格を表記。

 

図10ホクレン肥料製品の主要品目加重平均価格の推移
図10.ホクレン肥料製品の主要品目加重平均価格の推移
(2020《2肥》を100とした場合)

 

  • 肥料原料の輸入通関価格は2021(令和3)年から翌年にかけて急激に高騰し、その後、軟化してきましたが、依然、高止まりしています。2021(3肥)※1の途中で原料価格は急騰しましたが、ホクレンは、肥料年度中の肥料製品の供給価格を据え置きとしました。

※1.令和3肥料年度。なお、肥料年度は当年6月~翌年5月

Q.価格抑制や安定供給の取り組みは?

 

A.原料の調達先の多元化を進めています。

 

価格の抑制と安定供給に向けて、肥料原料調達先の多元化に取り組んでいます。

新たな調達先については、現地訪問等による品質確認を行いながら、日本との距離が近く、海上運賃を抑えられるアジア近郊を中心に、安価な原料の探索を進めています。

主要原料であるりん安は、現在は中国からの導入が多いですが、同国の輸出政策を注視しながら、導入時期によってはヨルダン等他国から導入することで、肥料製品の安定供給に向けて取り組んでいます。

なお、肥料高騰をきっかけに、国は肥料を「経済安全保障推進法」に基づく特定重要物資に指定し、2年前には肥料原料備蓄対策事業がスタートしました。

ホクレン肥料株式会社でも主要原料の備蓄に取り組んでいます。

 

図11ホクレンの主な肥料原料導入元
図11.ホクレンの主な肥料原料導入元

 

Q.肥料は今後、どうなるの?

 

A.国内の有機資源活用に努めています。

 

経済埋蔵量(※2)から推定したりん鉱石の可採年数は330年、加里鉱石は280年といわれています(※3)。

しばらく枯渇の恐れはないと考えられますが、世界の人口は増え続けており、肥料の需要はますます高まると見込まれます。

ホクレンでは世界的な肥料原料情勢に左右されにくい国内の有機資源を活用することで、肥料の安定供給、価格の安定化と合わせて環境負荷軽減に向けた銘柄を展開しています(詳しくは、04注目の肥料をご覧ください>>ページを読む)。

今後、生産現場でも、ムダなく適正に使うことがより求められるようになるでしょう。

 

図12りん鉱⽯の産出量及び経済埋蔵量
図12.りん鉱⽯の産出量及び経済埋蔵量※3

 

図13加里鉱⽯の産出量及び経済埋蔵量
図13.加里鉱⽯の産出量及び経済埋蔵量※3

 

  • 資源は一部の国や地域に偏在。りん鉱石は中国・モロッコの2カ国で世界の経済埋蔵量の約7割。加里鉱石はカナダ・ベラルーシの2カ国で約7割を占めます。

※2 経済埋蔵量とは現在のコスト水準、技術レベルで採掘が可能な量
※3 農林水産省「肥料をめぐる情勢」(令和6年12月)より