この記事は2019年10月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
POINT
●土壌pHの意味やカルシウムの役割を知り、適切な土づくりに努めましょう。
土壌pHが意味すること
土壌pHは、土壌の酸性の度合いを意味しています。pHは7が中性で、これより小さいと酸性、大きいとアルカリ性ということになります。土壌pHは、土壌中の養分や有害物質の作物への吸収されやすさ、微生物の働きなどに影響を与えることから、土壌分析で最も重要な項目の一つです。
ほとんどの作物は弱酸性を好みますが(表1)、降雨や施肥などによって土壌は徐々に酸性化が進むため(図1)、定期的に土壌分析を実施し、炭カルなどの石灰質肥料による適正pHへの改良が必要です。
土壌pH改良に向けた石灰質肥料施用
①石灰質肥料の施用方法
石灰質肥料のアルカリ分は、酸性を矯正する力を示します(表2)。
通常、ブロードキャスターなどで全層に施用されます。施用量が多い場合(200kg/10a以上)は、散布ムラを少なくするため2〜3回に分けて施用します。アルカリ分の大きい生石灰や消石灰は、一般的な石灰質肥料の炭カルより早く効き、必要量も少なくなります。
ただし、直接肌に触れないようにしたり、生石灰は吸湿性が強く水に濡れると発熱するので、雨水がかからないようにするなど、取り扱いや保管に注意が必要です。
また、生石灰や消石灰は種子や苗に触れると障害を起こす恐れがあるので、播種、定植の7〜10日以上前に施用しましょう。
②場面に応じたpH改良方法
畑作では、高pH土壌で馬鈴しょのそうか病発生を助長することが知られ、石灰質肥料施用が控えられる傾向にあります。
一方、てん菜は比較的高いpHを好むので、輪作体系でてん菜作付け時のみ一時的にpHを改良するには、石灰質肥料の作条施用や苦土炭カル入り複合肥料を用いるのが有効です。
施設園芸では、硝酸態窒素の蓄積でpHが低下している場合もあります。pHと合わせ土壌塩類濃度の目安であるECを確認し、低pH高ECの場合は石灰質肥料施用より、過剰な施肥を控える方が効果的なこともあります。
カルシウムの役割とその供給を目的とした肥料
石灰質肥料は、pH改良だけでなく土壌や作物にカルシウムを供給する働きがあります。カルシウムには生体組織の構造維持や情報伝達の役割があり、動物がカルシウムで強い骨を作るように、植物も強い植物体を作るため、また、温度や水分などの環境ストレスへの対応に必要な成分です。
硫酸カルシウムや硝酸カルシウムは、酸性改良効果はありませんが、炭カルより作物に利用されやすくpHに影響を与えることなくカルシウムを供給できます(表3)。
特に、馬鈴しょなど炭カル施用が控えられる作物でのカルシウム供給に効果的です。
ホクレンでは、硫酸カルシウムに微量要素のホウ素・モリブデンを加えた「PKB硫カル」について、施防協試験を経て、新たに取り扱いを開始しました(図2、表4)。
なお、小豆はホウ素過剰に弱いため、PKB硫カルは使用しないでください。