酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類
作物学研究室 教授 義平 大樹さん
Profile:1965(昭和40)年、神戸市生まれ。博士(農学)。北海道大学大学院農学研究科修了。北海道農業改良普及員を経て、1992(平成4)年から酪農学園大学に奉職、2009(平成21)年に教授。麦、豆類、とうもろこしの栽培研究を専門とするかたわら、農福連携の普及に力を注ぐ。2014(平成26)年に江別農福連携協議会を結成。2018(平成30)年6月に「一般社団法人れんけい」を設立し、代表となる。(大学の実験室で撮影)
この記事は2020年2月1日に掲載された情報となります。
私が農福連携に取り組み始めたのは、その言葉も浸透していない2012年です。石狩農業改良普及センターに行った際、「知的障がいをもつ人たちも、農業で就労できる可能性はないでしょうか」とダメもとで聞いたところ、当時、江別地区を担当されていた方が人材雇用促進協議会を紹介してくださいました。そこで知り合った農業者の協力で、翌春から市内の福祉事業所の障がい者による農作業が始まりました。
その後、江別農福連携協議会を結成し、微力ながら近郊の農福連携に関心のある農業者と福祉事業所のマッチングに取り組んでいます。また、2018年には農業者や北星学園大学教員、北海道社会福祉協議会の方々とともに「一般社団法人れんけい」を立ち上げ、全道的な農福連携の推進に努めています。
「本当に障がい者に農作業ができるのだろうか?」と考える農業者の不安も理解できます。キーポイントは農作業を分割して可能な部分を任せることや、農業者が障がい者を直接ケアするのではなく福祉事業所のスタッフがサポートを担い、作業の流れを理解し、進め方を考えること。こうした仲介役となる農作業に詳しい農業ジョブトレーナー育成も重要となります。
農福連携は、最初は労働力不足解消が目的でも、福祉ネットワークによる農産物や加工品の販売協力、地域によってはブランド化や耕作放棄地減少まで結びつく例が増えつつあります。更には農業に、食糧生産や農村維持、環境保全だけではなく、福祉の一端を担うという意義を加えることにもつながります。
農業と福祉のコラボで地域の活性化と共生社会を実現したい。障がい者を子どもに持つ親としても、理解ある農業者と自治体が増えることを心から願っています。