持続可能な北海道農業のためスマート農業がある

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野口伸さん

北海道大学大学院 農学研究院長 野口 伸さん

 

この記事は2023年6月1日に掲載された情報となります。

 

 「スマート農業」という単語が農林水産省で初めて使われた2013年から、今年はちょうど10年目。現在、日本のスマート農業は、我々が「レベル3」と呼んでいる「遠隔監視下で無人走行できる」ロボット農機の活用と、ドローンや衛星によるデータ農業の普及の段階に進んでいます。

岩見沢ではいち早く、意欲的な生産者さんたちとNTTグループ、北海道大学、岩見沢市の連携で実証プロジェクトが始まっており、実際の圃場でどれくらい有効活用できるか、貴重なデータを蓄積しています。

こうした実証の段階から、更に広く社会実装へとプロジェクトを進めていく時に番大切なことは、たくさんの異なる立場の方々とタッグを組む協業です。ユーザーである生産者さんはもちろん、我々大学研究者や民間企業、行政関係者など、いろんな方に入っていただいてその輪を広げていく。

そこで更に重要になるのは、「通訳」の存在です。スマート農業の導入によって生産者さんがどれくらい便利になるのか、体だけでなく経済的にもどれだけ楽になるか。例えば化学肥料が高騰する今、適切な削減にもスマート農業が使えることなど、「分かりやすい言葉」で、「聞き手に身近な立場の人たち」に発信してもらうことがとても有効だと感じています。

 今年8月、北海道大学内にスマート農業教育研究センターがオープンします。実際に北大農場を使ったスマート農業を見て、触れていただける施設ですので、ぜひご来場ください。昨年は札幌市内の小学生160人が見学に来てくれました。持続可能な北海道農業のために未来の世代に農業の魅力を伝えることも、私の重要な役目だと受け止めています。

 

Profile:1961(昭和36)年、北海道三笠市生まれ。北海道大学大学院農学研究科博士後期課程修了。北海道大学大学院農学研究院教授。ロボットトラクター研究の世界的権威としてスマート農業の普及に専心。池井戸潤原作のテレビドラマ「下町ロケット ヤタガラス」に登場するトラクター研究者のモデルとしても知られる。2023(令和5)年4月から北海道大学大学院農学研究院長に就任。撮影は新設の北海道大学スマート農業教育研究センターにて。