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「地産都消」の鍵は出口を見据えたものづくり

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「地産都消」の鍵は出口を見据えたものづくり

名寄市立大学 保健福祉学部 栄養学科
教授 加藤 淳さん

 

取材当時:地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 農業研究本部 道南農業試験場 場長
Profile:1958(昭和33)年、帯広市生まれ。農学博士。北海道立中央農業試験場、北海道立十勝農業試験場、オーストラリア・クイーンズランド大学などで豆類の品質、加工適性、機能性などについて研究。「あずき博士」として講演活動も幅広く、『小豆の力』(キクロス出版)、『あずき水ダイエット』(宝島社・監修)など著書も多数。2019年4月から現職。(前職の場長室で撮影)

 

この記事は2019年4月1日に掲載された情報となります。

 

生まれ故郷の北海道で各地の農業試験場に籍を置き、これまでさまざまな生産者の方々や農政・研究職の皆さんと緒に品種改良や栽培技術の向上に取り組む機会をいただきました。

中でも私が特に力を注いだことは、加工適性の研究です。北海道の農産物はどれも国内外に胸を張れるものばかりですが、「おいしい大豆」と「おいしい豆腐ができる大豆」は、似て非なるもの。生産時の気象条件や品種本来の特性が加工後の品質にどう関わってくるか、その加工適性の調査研究に30年近く携わってまいりました。

農業の未来のために「地産地消」と言われ続けて久しいですが、現代は地域で収穫したものを都会で消費する「地産都消」の時代。

その時に欠かせない要素が、マーケティングです。客員研究員として滞在したオーストラリアでは、生産者や農業団体、大学などの研究機関が体となり、新品種を作る時は「どこに売る?」という視点から出発し、成功している事例を見てきました。消費者に喜ばれる、出口を見据えたものづくりの重要性を感じています。

こうした事例は、もちろん北海道でも可能です。2018年に京極町の髙木智美さんが手塩にかけ高級食材としての販売を狙い育てた白小豆を、道南が誇る老舗和菓子店「五勝手屋本舗」さんにご紹介したところ、期間限定の新商品「五勝手屋ロール」や「鰊最中・群來(くき)」が誕生しました。

五勝手屋本舗さんでは新商品の開発につながり、白小豆の作付面積も倍になるベストマッチングとなりました。

今後は管理栄養士を目指す学生たちに向けて、北海道食材の魅力と同時に、食材の背後には常に生産者の皆さんがいることを伝えていきたいと思います。