この記事は2024年12月2日に掲載された情報となります。
2023年に追加されたJ−クレジットの方法論「水稲栽培における中干し期間の延長」。新たな作業負担や導入機器が無いことから、取り組む生産者が増えています。
J−クレジットをつくる
JAきたそらち 農業振興部振興課
課長 廣田 淳さん
JAきたそらちでは今年約50人が申請
JAきたそらちでは2024年からJ−クレジットの取り組みを推進しています。あくまで申請するのは生産者本人で、JAは支援の立ち位置に徹しました。3月の段階で申請の希望を出した水稲生産者は約70人、実際にJA経由で9月末までに申請したのは約50人。面積にして約1,000ha、水稲全体の1割ほどに当たります。
実際の申請支援は日程を決めて、何回かに分けて行いました。パソコンに慣れていない方には、JA職員がマンツーマンで対応しました。耕地のデータや減水深(田んぼの水持ち)のほか、中干しの開始時と終了時の写真撮影、登録作業と、多少手間はかかりますが、今回データを登録してしまえば、来年からの申請は楽になると思います。
中干し期間の延長により、過剰乾燥による根の障害や冷害に対するリスクがあることは、あらかじめ皆さんに注意喚起しました。実際に、中干しの途中で田んぼのひび割れがひどくなり、不安だからと水を入れて、申請を取りやめた方もいました。
なお、米の収量や品質に影響が出そうであれば、中断して水を入れても、当該年のクレジット収入は得られませんが、ペナルティなどはありません。
当初はこれだけの人数が申請するとは想定していませんでした。「少しでも収入につながるのなら」という方が多かったと思います。現時点で販売益はまだ分かりませんが、環境負荷低減した上で副収入も得られるならと、中干し期間の延長によるクレジット創出に参加したいという人が、今後増えていくと思います。
J−クレジットをサポート
ホクレン米穀部 米穀総合課
中干し作業を記録して申請するだけで副収入に
水稲の中干しを過去2年間の平均日数より7日間以上延長すると、J−クレジットを申請できる方法論が2023年にスタートしたことで、生産した米の収入のほかに、クレジットの販売で副収入が得られると、関心を集めています。
そこで、ホクレン米穀総合課ではまず、ゆめぴりかの生産者を対象に中干しの実施状況を調査。66%がすでに実践していることから、中干し期間の延長は、新たな作業負担なく収益につながる取り組みと判断。取りまとめ事業者のGreen Carbon株式会社(東京都港区)と連携し、JAや生産者向けの説明会を実施しました。
意向調査で2024年からJ−クレジットの取り組みに参加したいと回答したのは全道23JAで、生産者は519戸、面積にして8,711haほど。全道の水稲面積は約10万1,000haなので、全体の8%程度でした(2024年10月現在)。
取り組みに参加する生産者は、必要書類と写真を9〜10月末までに提出し、取りまとめ事業者を通じて申請。認証機関が審査し、承認されれば翌年クレジット化。それから取りまとめ事業者が企業や自治体へ販売し、㆒定の手数料を引いた金額が生産者の収入となります(図2)。
当事者同士で価格や数量を決める相対取引なので、販売額はまだ分かりません。また中干し延長で得られるクレジット量は、排水性の良し悪し、有機物施用の有無などを排出係数として掛けあわせるため、例えば泥炭地での取り組みのほうが多くなります。
まとまった収益になるなら、取り組む人は更に増えていくでしょう。ホクレン米穀総合課では中干し延長のほかにも、稲わらの秋すき込みや搬出を含め、環境負荷低減への取り組みを付加価値として打ち出していきたいと考えています。