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湛水直播で面積増に対応

キーワード:妹背牛町水稲直播研究会湛水直播
写真1ブームタブラーで大面積を短時間に播種
写真1.ブームタブラーで大面積を短時間に播種
この記事は2023年12月1日に掲載された情報となります。

妹背牛町水稲直播研究会会長長谷浩幸さん

妹背牛町水稲直播研究会
会長 長谷 浩幸さん

耕作面積は35ha強。水稲15.5haのうち9haが湛水直播。
品種は「えみまる」ほか。水稲のほかに麦と大豆を、妻と息子の3人で栽培。
北海道優良米出荷共励会の直播栽培部門で最優秀賞を受賞(2016年度)。

 

1997年には約8haだった農地が25年間で4倍以上になった妹背牛町の長谷浩幸さん。早くから直播栽培に取り組んできたおかげで、水張り面積を減らすことなく稲作を続けることができています。

乾田から湛水に切り替え

妹背牛町で試験的に水稲直播に取り組んだのは1993年。「平成の米騒動」があった冷害大凶作の年でした。

「移植の米は10a当たり300〜400kgなのに、直播が450kg そこそことれたんです。これはすごいことだぞと、うちも翌年から作付けしてみました」

仲間と水稲直播研究会を立ち上げ、50aの田んぼで直播に挑戦した長谷浩幸さん。当初は総合播種機を改良して乾田直播で取り組みました。

「うちの農地は代を掻かないと水が持たない土壌。播種後に水を入れても手前で地下に浸透してしまい、奥まで水が届かない。除草剤も当時は粒剤が主流で水がないと効かないため、ヒエ畑になって毎日ヒエ抜きしたこともありました」

水持ちのいい田んぼにするために、研究会でケンブリッジローラーを用意し地固めをしても効果なし。ひと晩かけて水を溜めても、朝に水を止めると昼にはなくなってしまうので「乾田ではムリ」と判断し、湛水直播に切り替えました。

ブームタブラーで播種

農機メーカーに掛け合い、湛水直播用の播種機を北海道バージョンで作ってもらいましたが、種が深く埋まりすぎて芽が出ません。試行錯誤を繰り返し、安定してきたものの、条播機は田植え並みに時間がかかるのが難点でした。

研究会の仲間が視察に行ったイタリアではブロードキャスターで種籾を播いていると聞いて、思い付いたのが、肥料をまくブームタブラー(写真1)での播種でした。ムラなく播くのは難しいものの、時間は短縮できました。

代掻き後、水のない状態の、とろとろの圃場に催芽籾を落とし(写真2)、圃場にひび割れが入ってくるまで待って入水(写真3)。表面に水を走らせてすぐ落とすことを3〜4回繰り返し、種籾に水を供給しながら出芽させます。

 

写真2.催芽籾を落とした圃場
写真2.催芽籾を落とした圃場

 

写真3.入水した圃場
写真3.入水した圃場

 

根が下りて本葉が1枚出てくるようになったら水を浅く入れます(写真4)。深すぎると窒息したり、浮き根になってしまったりするので、注意が必要です。

 

写真4.水を浅く入れた圃場
写真4.水を浅く入れた圃場

 

長谷さんは用水と排水につながる溝切り(写真5)を行い「一面に水を張ってすぐに落水ができるような圃場づくり」を心掛けています。

 

写真5用水と排水につながる溝切り
写真5.用水と排水につながる溝切り

 

更に根が下に入るよう落水して〝中干し〟することで根固めを3回。成長調整剤を使って徒長を抑制し、倒伏の軽減も図っています。

直播で良食味米を追求

長谷さんの父(故人)は、30年前から直播を積極的に推奨していたと言います。

「親父はもともと普及員で定年後に妹背牛町の技術指導員になったのですが、将来はおそらく農家が百戸前後に減ると予測。3300haの農地を守るには1戸30‌haは作らなきゃならないからと、直播の導入を強く勧めたんです」

当時は半信半疑だった長谷さん。親から経営を引き継いだ1997年に約8haだった農地は、父の言った通り、気付いたら30‌haを超える大面積になっていました。それでも育苗ハウスは8ha分が限界。「もし、直播の技術を身に付けていなかったら転作に回していたんじゃないか」と振り返ります。

妹背牛町水稲直播研究会では、直播だからといって収量や品質が低くても仕方ないとは考えません。長谷さんは「移植の収量を直播が上回った年もあった」そうです。低タンパクの良食味にもこだわり、研究会メンバーの「ほしまる」は第1回米‐1グランプリで、移植の米と対等に競い入賞を果たしています。

直播はまだまだ進化する

「来年はブームタブラーにオートパイロットをセットして高精度播種を目指したい」と意気込む長谷さん。研究会の仲間にはドローンのタンクを自分で改造してドローン播種を始めた人、ブロキャスでの高速播種を目指す人もいるそうです。「好奇心旺盛な仲間が多いんだよ」と笑う長谷さん。最後にこれから取り組む人へのアドバイスを尋ねると、こう教えてくれました。

 

写真6除草剤は早め早めの対処が肝心
写真6.除草剤は早め早めの対処が肝心

 

「1年生は注意深く田んぼを見るから収量がとれるんですよ。2年目になると自信がついて、3年目になって、ここで手を抜いてもいいかなと我流が出てくると、とれなくなる(笑)。やっぱり基本に忠実、これが大原則です」

 

写真7秋すき込みなど圃場整備も重要
写真7.秋すき込みなど圃場整備も重要