ドローンを用いた水稲湛水直播栽培の検討

キーワード:ドローン直播直播栽培技術省力化技術
写真1.ドローンによる播種風景(2021年度)
写真1.ドローンによる播種風景(2021年度)
この記事は2023年10月13日に掲載された情報となります。

カテゴリー:生産振興
実施年度:2021~2023年度
対象:JAきたそらち
実施:岩見沢支所営農支援室
協力関係機関:JAきたそらちスマート農業技術研究会、ホクサン株式会社、空知農業改良普及センター北空知支所、空知地区直播連絡協議会

 

POINT
●ドローンを用いた水稲湛水直播で省力化を進める
●播種作業時間の短縮につながる

 

ドローンを用いた水稲湛水直播による省力化

北海道の水稲生産における大きな問題の一つに、高齢化・担い手減少など労働力不足による水稲面積の減少があります。

地域によっては生産者戸数の減少で、一戸当たりの作付面積が拡大。省力化が急務となっています。北海道米の生産量を維持するため、今後も直播などの省力化技術が普及していくと考えられます。

注目される技術の一つが「ドローンを用いた湛水直播」です。

そこで、従来の点播機を用いた播種とドローンによる播種の比較を行い、省力性や生育、収量への影響についてJ‌Aきたそらちと共同で検証しました。

2021年度は作業時間・生育・収量・品質などを比較

2021年度は、XAG社製ドローンを用いた播種と点播機を用いた播種の作業時間を、2圃場で比較しました。(写真1・2)。

写真2.点播機による播種風景(2021年度)
写真2.点播機による播種風景(2021年度)

40aの圃場において、播種時間はドローンが16分、点播機が27分との計測結果でした。ただし、このドローン機種では、これに加えて初回のみ圃場の計測などの準備時間が必要です(2回目以降は不要)。

ドローン播種区は播種ムラが出たものの、苗立ちについては直播栽培における目安とされる150本/㎡をいずれの圃場でも上回り、良好な結果となりました。

また、水稲の生育や収量・品質についても大きな差はありませんでした。

前年の結果を踏まえ、改善した2022年度の取り組み

2022年度は粒剤散布装置の種子送り出しローラーを変更したことで播種精度が改善されました。(写真3・4)。

写真3.2022年7月15日撮影のドローン播種区の状態
写真3.2022年7月15日撮影のドローン播種区の状態
写真4.2021年7月10日撮影のドローン播種区の状態
写真4.2021年7月10日撮影のドローン播種区の状態

苗立ち本数も、点播機の播種区とほぼ同等で良好でした。なお、茎数や草丈はドローン播種区が少なく推移しました。

収量構成要素を見ると穂数はほぼ同等でしたが、ドローン播種区では一穂籾数が多くなったことで総籾数が多くなり、調査地点の収量はドローン播種区が点播機播種区を上回る結果となりました。

なお、生産者の実収量(JA入庫量)はほぼ同等という結果になりました(表1・図1)。

表1.生育調査結果(2022年)
表1.生育調査結果(2022年)
播種日:ドローン5/12、点播機5/10
品種:えみまる  播種量:10㎏/10a
図1.収量調査(玄米重、坪刈り調査は各区2カ所平均)
図1.収量調査(玄米重、坪刈り調査は各区2カ所平均)

2023年度は他社製ドローンによる試験を実施

2カ年の試験の結果、ドローン播種は点播機による播種と比較して生育や収量には問題がなく、播種時間が短く省力化可能な播種手段であると考えられました。

これまでの試験結果をJAきたそらちスマート農業技術研究会や水稲直播研究会で報告したほか、管内各地区のスマート農業講習会や空知地区水稲直播協議会においても紹介しました。

2023年度は生産者所有の他社製ドローンを用いて試験を実施しています。