肥料農薬

「飼料用とうもろこしへの塩加施用」と「水稲の新規一発処理除草剤」~令和元年度 施防協試験より

キーワード:肥料農薬
この記事は2020年6月1日に掲載された情報となります。

ホクレン 肥料農薬部 技術普及課

POINT
❶飼料用とうもろこしへの塩化カリ施用でコスト低減が図れます。
❷新規水稲初中期一発処理除草剤は高い除草効果が期待できます。

J‌Aとホクレンでは、全道各地区に「施肥防除合理化推進協議会(施防協)」を組織し、施肥や防除に関する課題解決に向け、農業試験場・普及センターなどと連携して現地試験を行っています。

1 飼料用とうもろこしへの塩化カリ施用の効果

塩化カリ(塩加)は硫酸カリ(硫加)よりも安価でカリ成分も高い(塩加:60%、硫加:50%)ことから、硫加から塩加への置き換えは施肥コスト低減につながります。方で、塩素は土壌に吸着されにくく、塩類濃度(電気伝導度:EC)を高めやすい特性があります。そこで、これまで硫加が使用されてきた飼料用とうもろこしについて、塩加を施用しても出芽率や収量に問題がないかを全道4カ所で確認しました。

試験に使用した塩化カリの銘柄
表1. 試験に使用した塩化カリの銘柄
※銘柄名の数字の前の「C」が塩加の目印。

試験結果

圃場条件による収量差が一部ありましたが、出芽率や初期生育を含め総じて硫加と同等でした(図1)。塩加施用区では、施肥直後にはECが上昇する例もありましたが、出芽に影響しない範囲(1.0‌mS/㎝以下)でした。北海道施肥ガイドの施肥標準量の範囲内であれば、塩加を使用しても飼料用とうもろこしに影響を与えずにコスト低減が図れると評価しました。

カリの種類が飼料用とうもろこしの収量や出芽に与える影響
図1. カリの種類が飼料用とうもろこしの収量や出芽に与える影響
※乾物収量の括弧内は硫加施用区対比%

なお、塩素を含むその他肥料を併用する際は、E‌Cが高くなりすぎないようご注意ください。

2 水稲の新規初中期 一発処理除草剤の効果

ミズアオイなどの年性広葉雑草やホタルイに対し高い効果が期待できる「フェンキノトリオン」、高葉令のノビエに対して効果が期待できる「トリアファモン」を含む水稲除草剤5種の効果や薬害について、全道47カ所で現地慣行薬剤と比較しました(表2)。

各薬剤の特徴や留意点
表2. 各薬剤の特徴や留意点
※1. FL:フロアブル ※2. J:ジャンボ剤
※3.使用適期は指導参考事項の考え方に基づく。なお、各剤とも移植後30日を超えると登録外使用となるため、使用しない。
※4.ジャンボ剤の使用適期は移植0~20日後、ノビエ2.5葉期まで。

試験結果(表3)

各薬剤の実用性判定結果
表3. 各薬剤の実用性判定結果
※散布遅れ:1カ所 オモダカ多発圃場:1カ所

●除草効果
いずれの薬剤も現地慣行薬剤と同等以上の除草効果が認められました。

●薬害
散布の時期が高温で推移した昨年は薬害が発生しやすい条件でしたが、薬剤散布時に薬液が付着したとみられる軽微なものが1件のみ確認されました。

●実用性評価
薬剤の散布遅れやオモダカ多発圃場において「やや低い」評価もありましたが、8割以上で「高い」または「ある」と評価されました。

今回の結果から、「フェンキノトリオン」や「トリアファモン」の安定した効果が確認されました。しかし、散布遅れや、均平が不十分な場合、田面の露出などにより雑草を取りこぼすこともあるため、効果を最大限発揮できるよう、適正使用に留意が必要です。