持続的な水稲種子の生産と供給に向けて

Q&Aで見えてくる
水稲種子生産・供給の現状は?

キーワード:水稲水稲種子種子生産

水稲種子生産供給の現状は

この記事は2025年8月6日に掲載された情報となります。

ホクレン米穀部 米穀総合課

 

種子の生産は、水稲栽培の根幹です。米の情勢が大きく変動する昨今、安定した水稲種子生産を継続するためには、一般水稲生産者の皆様によるご協力が不可欠です。

 

Q水稲種子はどうやって届く?

A需要調査に基づき生産され、品質検査を経て出荷されます

水稲種子は、需要に応じて生産される「受注生産型」です。全道7カ所(北斗市・当別町・岩見沢市栗沢町・滝川市江部乙町・芦別市・秩父別町・中富良野町)、6水稲採種組合に所属する生産者によって栽培されています。

種子を使用する前年の1月に各地のJ‌Aを通じて実施される需要調査を元に、種子生産者による栽培が始まります(図1)。

 

図1水稲種子生産の流れ
図1.水稲種子生産の流れ

 

そして、生産者から出荷された種子原料はホクレン滝川種苗生産センターに集められ、異物除去などの調製後、道の生産物審査を経て、発芽率など基準を満たしたものだけが全道のJ‌Aを通じて㆒般の水稲生産者のもとへ届けられます。 

 

Q需要調査の目的は?

A調査を元に採種圃の面積が決まります

種子の栽培は、基本的に種子を使用する前年に行われます。

前年1月に実施される需要調査は、採種圃の面積を決定するためのものであり、最も重要な調査です。  また、7月に行う需要確認は、収穫された種子原料のうち、買入れする量を最終的に確定させるためのものです(図1)。

このように、種子を栽培する大まかな数量(面積)は、出荷の1年前に決定しなければなりません。

米の需給を見通しにくい中、翌年の品種ごとの数量を判断するのは難しいですが、早めに需要をお知らせいただくことが、種子の安定供給につながります。

 

Q水稲種子栽培の問題点は?

A多くの労力とコストがかかり、生産者が減少しています

水稲種子栽培は品質を確保するために厳格な管理が求められ、㆒般的な水稲栽培以上の労力とコストがかかっています。

各地の種子生産者は徐々に減少しており、新たな担い手もなかなか見つかりません。個々の生産者の面積が増え、高齢化や人手不足も進み、種子生産体制の維持が困難になりつつあります。

 

Q需要調査の課題は?

A需要に基づく生産を行っていますが、昨年、一部品種で供給が困難となりました

昨年、採種圃面積を決定し、原料買入数量の確定後に、一部品種において需要が大きく増加した結果、供給が困難となるケースが発生しました。

特に、省力化栽培技術に適した品種(「えみまる」など)は、面積当たりの播種量が多いため、種子が大きく増加する傾向にあります。

㆒方、供給数量の過剰な余力は、コスト増加となってしまいます。このことから、需要に基づく適正な供給数量の確保が重要となります。

 

Q他に何か課題はありますか?

A少量品種の供給が課題です

少量流通する品種については、品種数の増加による種子生産者の負担を軽減するため、2年に一度の「隔年生産」体制で対応していますが、供給調整がより難しく、需要の急増に十分対応できない場合があります。

北海道で生産される水稲は、もち米や酒米を含めて現在21品種もあり、品種数の集約も課題となっています。

 

Q安定供給のために必要なことは?

A種子生産に必要なコストを踏まえた種子の価格と、早期需要提示が重要です

安定供給のためには次の2点が不可欠です。

①種子生産に必要なコストを踏まえた種子の価格

前述のように種子生産には大きな労力がかかるうえ、コストも年々上昇しています。

更に、種子の加工・流通コストも上昇する中で、引き続き事業全般のコスト低減に取り組んでいきます。

また、対応しきれない部分は、㆒定程度、種子販売価格への転嫁を行うことで、持続的な水稲種子生産体制の構築を進めていく考えです。 

②需要調査の段階で早めに需要提示

近年の不透明な情勢の中では難しい面もあるかと思いますが、各地のJ‌Aや一般水稲生産者の皆様の協力が必要です。

そして、品種を変更したい場合などは、できるだけ早めにJ‌Aの担当者へご相談いただくことで、需要に応じた種子の安定供給につながります。  

今後も北海道米の生産を持続可能なものとしていくため、皆様のご理解とご協力をお願いします。