品種

直播栽培に適した水稲新品種「上育471号」

キーワード:新品種水稲直播栽培技術

直播栽培に適した水稲新品種「上育471号」

 

この記事は2018年12月1日に掲載された情報となります。

 

ホクレン 米穀部 米穀総合課

 

POINT!
❶「上育471号」は「ほしまる」に比べ、
①低温苗立性
②いもち病圃場抵抗性
③玄米品質
④収量
で優位です。
❷ホクレンでは来年度からの一般栽培に向け、栽培技術資料を配布予定です。

 

「ほしまる」から「上育471号」へ

北海道の稲作における一戸当たり面積の拡大が進む中、育苗が不要な直播栽培は水張り面積の確保や規模拡大に有効な省力栽培技術の一つと言えます。

寒冷地である北海道の直播栽培は、低温条件下での苗立性が収量に大きく影響します。現在の直播栽培は、「ななつぼし」等の中生品種が栽培可能な道南地区を除き「ほしまる」が主力品種の一つですが、低温苗立性が不十分なことなどから、生産の安定性と収量性が十分とは言えません。

そこで、道総研上川農業試験場が、低温苗立性の良い「緑系07216」(上川農業試験場とホクレンによる共同研究にて育成)を母、早生で耐冷性・耐病性の強い「上系06181」を父として育成した直播栽培向けの新品種が「上育471号」です。「ななつぼし」並みの食味を有しつつ(P23参照)、低温発芽性や低温苗立性が対照品種の「ほしまる」を明らかに上回ります(図1・2、表2)。

 

図1.水田での苗立ちの様子
図1.水田での苗立ちの様子

 

図2.低温苗立率の比較(室内検定)
図2.低温苗立率の比較(室内検定)
※低温条件(13~14℃)での苗立率

 

表2.特性検定試験および苗立率調査結果
表2.特性検定試験および苗立率調査結果

 

また、いもち病圃場抵抗性が強く(図3、表2)、玄米品質に優れ、収量がやや多い特長があります(表1)。

 

図3.穂いもち病圃場抵抗性検定の様子
図3.穂いもち病圃場抵抗性検定の様子

 

表1.生育および収量関連特性調査結果
表1.生育および収量関連特性調査結果

 

直播栽培としての栽培適地は、図4の七つの地域の、「ほしまる」湛水直播栽培適地に準じます。

 

図4.「上育471号」の栽培適地
図4.「上育471号」の栽培適地

 

これらの特性から、直播栽培でも安定生産可能な「上育471号」に転換することで省力化(図5)が進み、水張り面積の確保や拡大への貢献が期待できます。

 

図5.春作業時間の比較
図5.春作業時間の比較
※北海道農業生産技術体系(第4版)より抜粋して作成

 

なお割籾が多いので、斑点米などの被害粒による品質低下を避けるため、適正な病害虫防除と適期刈り取りが重要です。

 

栽培技術資料を配布

今年、ホクレンでは各JAや農業改良普及センター等と連携の上、全道14カ所に「普及展示圃」を設置し、「上育471号」の試験栽培を行いました。現在、農業試験場や北海道米麦改良協会の協力を得て、各種データ収集と解析を行っています。来年産からの一般栽培に向けた栽培技術資料を作成し、「上育471号」を栽培する全生産者へ配布する予定です。なお、直播栽培向け品種は、販売先の評価や産地における生産性の確認が進むことで、将来的に「上育471号」に集約されていくと想定されます。

 

※各図表(図4・5を除く)と写真は道総研上川農業試験場提供