この記事は2019年12月1日に掲載された情報となります。
水稲の1戸当たりの作付面積は増える一方です。これ以上大きくなったら、米づくりは諦めるしかないのでしょうか。中央農試の後藤研究主幹に伺いました。
北海道立総合研究機構 農業研究本部 中央農業試験場
生産研究部 水田農業グループ
研究主幹 後藤 英次さん
1戸当たりの作付面積は増え続け、このまま推移すると10年後には30haを超えると予測されています。これ以上面積が増えれば、従来の作業体系では対応しきれなくなると感じている方も多いでしょう。
中でも悩みの種は苗づくり。苗をつくれば米づくりは半分終わったようなものとして、昔から「苗半作」という言葉があるくらい、育苗には手間と時間がかかります。
道の農政部でまとめている「北海道農業生産技術体系」で見ても、米づくりにかかる時間の3分の1は育苗に費やされる計算です。つまり、苗づくりをなんとかしないと、北海道の水稲の面積を維持できなくなる。
そこで以前から苗づくりを省力化するための技術が試験場や農機メーカーなどで研究されています。苗をつくらない「直播栽培」、1枚の苗箱からとれる苗の数を増やす「密苗」や「密播中苗」、株間を広げて苗の数を減らす「疎植栽培」などが、ようやく実用段階に入ったところです。
北海道の米づくりは、戦後まもない頃は「収量アップ」を、ここ30年は「品質の向上」をテーマに品種開発や技術改良が行われてきました。その努力が実り「ななつぼし」や「ゆめぴりか」が誕生して、おいしいお米づくりの技術が確立。これからは「労力をかけないつくり方」が新しいテーマになります。
もちろん、「労力をかけない」ことで、品質と収量が不安定になっては意味がありません。地域の気候や自分の経営スタイルにあった技術を取り入れ、省力化を実現しながら、より高い品質で安定した収量を保ち続けることが重要です。
お近くの普及センターやJAと相談しながら各技術の導入を検討してはいかがでしょうか。
旭川市 荒川ファーム代表 荒川 始さん