この記事は2019年2月1日に掲載された情報となります。
道内で使われている主要農作物の種子づくりは、ほんの一握りの種から始まります。種子生産の起点となる「育種家種子」生産や備蓄の取り組みについて、道総研中央農業試験場 遺伝資源部で教えてもらいました。
地方独立行政法人 北海道立総合研究機構(道総研)
中央農業試験場 遺伝資源部 部長 田中 義則さん
育種家種子は中央農試の遺伝資源部等で生産
遺伝資源部では、主要農作物等の種子生産の起点となる「育種家種子」を生産しています。
新品種を開発した育成場からできたばかりの種子を受け取り、育成場と遺伝資源部が種子を折半して同時にまき、両場でチェック。病気や異型のない種子を選んで純度の高い育種家種子を作出します。
主要農作物の優良品種は種子を2年分備蓄
道から寄託され、育種家種子および原原種の備蓄も担当しています。
天候不順や災害等により原原種の収量が不足する事態に備え、約2年分をめどに備蓄しています。
水稲は増殖率が高いので育種家種子から原原種をつくるのに対し、麦類や大豆は増殖率が低いので育種家種子を再増殖してから原原種をつくるルール。
原原種自体も3年に1回置き換える回転備蓄をしていますが、原原種の生産を担うホクレンでは、圃場のやりくりが大変になっています。
植物遺伝資源は「公共財」として保存管理
品種改良には育種素材としての種子が必要になります。植物遺伝資源といいますが、これを保存管理するのも遺伝資源部の役目です。現在は栽培されていない古い品種や、道外などから取り寄せたものなど、約2万8,000点の種子を貯蔵庫に保存しています。
そのうち85%は稲や麦類、豆類の種子です。これらは次の世代へ引き継いでいかなければならない公共の財産。一度失われた植物遺伝資源は二度と手に入れることはできないので、毎年発芽率を調査し、必要に応じて再生産を行って管理しています。
遺伝資源の情報はデータベースにして整理して公開。試験研究や北海道の地域振興を目的とする場合には、種子の提供も行っています。