この記事は2018年6月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
POINT!
❶ケイ酸は病害虫・ストレスに強い水稲を作ります。
❷ケイ酸を十分に吸収した水稲はタンパク含有率が低くなり、食味が向上します。
ケイ酸の役割
ケイ酸は水稲にとっては非常に重要な成分で、その吸収量は窒素の10倍、リン酸の20倍にもなります。水稲がケイ酸を多量に吸収すると、生育が向上し、米の品質や食味が良くなることが知られています。
①病害虫・ストレスに強い水稲を作る。
水稲が吸収したケイ酸は、葉や茎の表面にケイ酸が沈積したケイ化細胞を形成します。
これによって植物体が硬く丈夫になることで、いもち病などの病原菌や害虫が侵入しにくくなったり(耐病性向上)、茎の強度が増して倒伏に強くなります(耐倒伏性向上)。
また、高温時には過剰な蒸散を抑えて水ストレスを減らしたり、低温時には花粉形成阻害を軽くして不稔発生を抑制し、冷害の軽減につながります。
②食味向上の仕組み(図1)
ケイ酸の働きで植物体が硬く丈夫になり、葉が直立することで受光体勢が良くなり光合成を促進します。また、登熟能力も向上することから玄米生産効率が向上し、低タンパク化により米の食味が良くなります。
ケイ酸の施用方法
水稲は土壌、灌漑水、稲わら、堆肥などから供給されるケイ酸を吸収していますが、これらでは不足するので、ケイ酸質肥料を毎年施用することが基本です。
「北海道施肥ガイド2015」では、土壌診断に基づいたケイカルの施用量を示しています(表1)。
一般的に、ケイカルは融雪を兼ねて10aあたり2〜3袋(40〜60㎏)散布される場合が多いですが、北海道の土壌のケイ酸肥沃度は基準値より低い圃場がほとんどで、そのような圃場では別途ケイカルを施用する必要があります。
耕起前に全層施肥し、土とよく混合することが基本ですが、稲わらの分解促進を兼ねた秋すき込み時の施用も有効です。
また、幼穂形成期1週間後のケイ酸質肥料20㎏/10a追肥は、不稔軽減や低タンパク米の生産に有効です(写真1・図2)。
ケイ酸質肥料の特長
ケイ酸質肥料はケイカルの他にも、微量要素を含む「ミネカル」「テツケイカル」、ケイ酸の肥効が良い「ゆめシリカ」「とれ太郎P」、追肥に適した「まいシリカ」などがあります(表2)。
また、施肥と同時にケイ酸を補給できる、けい酸加里入りのBB肥料や化成肥料もありますので、お近くのJAへお問い合わせください。