稲作生産者Cさんのお悩み
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春先の育苗や田植えが忙しくて大変。少しでも労力を減らせれば身体の負担も減り、空いた時間で他のことができる。何とかなりませんか?
苗箱に3倍の密度で播種、育苗期間も短縮
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育苗や移植の時期のことを考えると憂鬱だな~。最近は育苗資材のコストも上がって悩ましいです。
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なるほど、水稲高密度播種短期育苗という技術を聞いたことはありますか?
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資料を読んだことはありますが、実はあまり分かってないんです……。
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水稲高密度播種短期育苗は、通常の2.5倍~3倍の密度で播種して慣行栽培より短期間で育苗する技術です。
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2.5倍~3倍も密集させて育苗するということですよね。密集させた苗を短期間に育苗させるなんて難しそう。
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注意点は後ほど解説しますね。育苗箱1箱当たりの播種量が増えるので育苗箱が減り培土や農薬など必要な資材も減らすことができます。密集させて育苗するので育苗ハウスの面積も少なくていい。育苗にかかるコストがカットできます。
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労力の面ではどうですか?
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移植時の労力を軽減できます。3倍に密集させて育苗する場合、苗を運ぶ回数が1/3になりますよね。田植え機への苗の積み込み回数が減り、苗箱の後始末の時間も短縮できます。
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育苗箱当たり通常の2.5倍~3倍の密度で播種するので、育苗コストや労力が大きく削減できます。
高密度播種短期育苗には何が必要?
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とてもいい技術ですね。取り組むために必要なものはありますか?
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約3倍の密度で播種を行うために、高密度播種対応の「播種機」と、高密度で生育している苗を育苗箱から小さく搔き取ることのできる「専用の移植機」が必要になります。専用の移植機は各メーカーで展開しています。
高密度播種短期育苗の注意点
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注意する点はどのようなことですか?
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育苗期間は通常より短くなりますが、密植することから、苗の草丈管理、特に苗の徒長に気を付けなくてはなりません。また北海道では育苗中に窒素追肥(窒素成分1g/箱)が必要です。
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移植後はどうですか?
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苗が小さいため移植後の水没を防ぐ浅植えなど、水位の調整が必要になります。また、小さい苗を移植するので、やはり生育遅延のリスクもあります。そこで、この栽培法に適した品種として、直播向け早生品種である「えみまる」が推奨されています。「えみまる」を用いた高密度播種短期育苗による栽培可能地域は、中苗の「ななつぼし」とほぼ同じであるとされています。
図1.収量の比較(地独)北海道立総合研究機構提供
写真1.中苗と高密度播種短期育苗における苗の比較(地独)北海道立総合研究機構提供
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省力化しても収量は大きく変わらないんですね。
詳しくは下記リンク先よりアグリポート36号(P31-32)
北海道における高密度播種短期育苗の適応性と早生品種「えみまる」の導入効果をご覧ください。