北海道の農畜産物にとって重要な物流の効率化や省力化

キーワード:トラック輸送物流省力化

物流環境の変化に対応した取り組み

道内で生産された農畜産物を消費地などへ運ぶ物流の情勢が変化しています。安定した輸送力確保への取り組みが求められています。

この記事は2023年12月4日に掲載された情報となります。

 

ホクレン 物流部 物流総合課

 

北海道の地理的条件に対応した輸送体制

北海道で生産される農畜産物の約7割は道外で消費されますが、北海道は大消費地である関東・関西から遠く離れ、更に海で隔てられています。

こうした輸送に厳しい面に対応するため、長年をかけ物流体制が構築され、現在、道外への輸送はトラックやトレーラー(荷台)を載せて運ぶフェリーやRORO船※(約5割)、青函トンネルを通る貨物鉄道輸送(約3割)、バラ積みで大量輸送する船舶や不定期船(約2割)などで行われ、品質管理面や物量、コストなどから、農畜産物の種類によって輸送手段が選ばれています(表1)。

※トラックやトレーラーなどの車両が、自走して直接乗り降り可能な貨物船

 

表1道外移出の輸送手段別の数量(2021年度ホクレン取り扱い実績)
表1.道外移出の輸送手段別の数量(2021年度ホクレン取り扱い実績)

 

輸送環境変化と深刻さを増すトラックドライバー不足

貨物鉄道輸送は、①青函トンネルにおける新幹線と貨物列車の共用走行区間や②北海道新幹線の札幌延伸に伴う並行在来線、③JR北海道が単独では維持困難とする線区に含まれる3線区と、いずれも貨物列車が通る路線の維持存続が懸念される状況にあり(図1)、関係機関へ存続に向けた情報発信や要請活動などを行っています。

 

図1対本州方面の貨物鉄道輸送とフェリー等航路のネットワーク
図1.対本州方面の貨物鉄道輸送とフェリー等航路のネットワーク

 

また、フェリーやRORO船などの船舶も船員や港湾荷役作業員の不足、船舶用燃料油価格の高騰などの課題があります。

そして、近年、心配されているのがトラック輸送です。

道内間だけでなく、道外への輸送手段でも、発着地と産地・消費地を結ぶトラック輸送は欠かせません。しかし、少子高齢化による労働人口減少や、他産業と比較して労働時間に対する給与水準が低いことなどから、トラックドライバーの不足が続いています。2024年4月からは、自動車運転業務の時間外労働の上限規制が始まり、更なる深刻化が懸念されています。出荷量が秋に偏(かたよ)ったり、生産地の人口が少なかったりする北海道は、ドライバー確保がより厳しくなっています。

物流の効率化や省力化を図る取り組みが重要です

トラックドライバーの不足に対応し、安定した輸送を行っていくには、物流の効率化や省力化が必須です。

そこで、産地や輸送会社など関係者と連携・協力し、①産地から消費地まで農畜産物をパレット付けで輸送し、荷役作業省力化や拘束時間短縮を図る、一貫パレチゼーション輸送(図2)や、②増トントラックなど、輸送機材の大型化による効率化。

 

図2一貫パレチゼーション輸送(イメージ)
図2.一貫パレチゼーション輸送(イメージ)

 

③同一車両による往復物流で効率化を図る、関東への米穀などの南下輸送と飲料メーカーなどの北上輸送とのマッチング(図3)。

 

図3.往復物流(イメージ)
図3.往復物流(イメージ)

 

④中継拠点設置による、中国・四国・九州向けの家畜生体輸送での長時間運行の削減や、製糖工場への原料てん菜輸送の効率化と繁閑差緩和(次ページで紹介)などの対策を実施していますが、更に広げていく必要があります。

今後の安定した輸送力確保に向け、関係者一体となった取り組みが求められています。

 

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