この記事は2021年6月4日に掲載された情報となります。
- ホクレン肥料農薬部技術普及課より、ドローンによる農薬散布技術について情報を発信いたします。
近年、注目を集めるドローンによる農薬散布技術
2015年、航空法の改正に伴い、小型無人航空機(ドローン)での農薬散布が可能となりました。これまでにホクレンでは普及に向けて様々な関係機関やメーカーと連携し、各種実証試験を実施してきました。今回、その結果や留意点について紹介いたします。
1.防除効果
試験を実施した作物の対象病害虫に対して、いずれも効果は認められましたが、ドローンは極少水量散布のため、慣行のスプレーヤと比較してやや劣る結果もありました。
・小麦 雪腐病:スプレーヤや無人ヘリと比較して同等の結果
・水稲 除草剤、いもち病・カメムシ類:無人ヘリやパンクルと同等の結果
・だいず マメシンクイガ:スプレーヤ対比でやや劣る結果
- 2.飛散(ドリフト)状況
飛行高度2mの条件では風下で10m離れた箇所においてもドリフトが認められましたが、風速や風向によってはさらに離れた地点においてもドリフトの可能性が考えられます。ドローンで散布する農薬の散布液は通常の散布液より高濃度であることから、ドリフトした場合の残留リスクが高まります。散布の際には、風速や風向に十分留意する必要があります。
3.作業性
散布水量1.6L/10aとし、2ha圃場を無人ヘリとドローン(DJI T-20)で防除作業を行い、作業時間を比較したところ、ドローン(28分14秒)は無人ヘリ(57分43秒、暖気運転含む)と比較して作業性が優る結果が得られました。
4.課題
畑作・園芸・酪農分野では無人航空機による散布登録の農薬が少ないため、ドローンだけでローテーション防除を行うことが困難です。また、散布用タンクの容量拡大、飛行時間の長時間化も望まれます。 - 5.今後の展望
更なる普及に向けては大きく2つの課題があると考えられます。1つ目は散布可能な適用農薬数を増やすこと、2つ目はセンシングと連動したピンポイント防除技術の開発です。特に畑作・園芸・酪農分野においては散布可能農薬が少ないことから現在、メーカーと連携して適用拡大に向けた試験を実施しています。
当初のドローン(操縦型、バッテリー・タンクの関係で1フライト1ha程度散布可能)と比較し、現在は操縦型以外に完全自動飛行型のドローンや1フライトで2ha程度散布可能なもの、1人で複数機の協調飛行が可能なものなど大きく技術的な進歩が見られます。更にはセンシング用ドローンと連携してスポット的に防除する技術の開発も進められており、雑草や病害虫の発生している箇所にのみ防除することが可能になれば、効率化及び防除コストを大きく下げることが可能です。ホクレンとしてもスポット散布を行うためのデータ収集等、本技術の開発に取り組んでいます。6.参考記事
ア.アグリポート
2017年10月号「ドローンによる農薬散布の効果と留意点」
https://agriport.jp/wp-content/uploads/2022/11/a84b859ea330ec33482f4eec0ac03f8b.pdf
2020年2月号「農薬散布用完全自動飛行ドローン XAG P30」
https://agriport.jp/wp-content/uploads/2022/11/d2ed1a8fdde6b906b0e35ded2daaf9b7.pdf
2020年10月号「使える農薬の拡大で進む ドローンによる農薬散布」
https://agriport.jp/wp-content/uploads/2022/11/5ba79c79ae8ea9c9d6cdc6894b21c504.pdf
イ.事例でわかる米づくりの省力化 2020年1月31日発行
「農薬散布ドローンの現状と展望 p21」
https://agriport.jp/wp-content/uploads/2022/11/0442a46b21dd258f6c40fcf4afb503e6.pdf
ウ.ニューカントリー
2019年5月号「防除効果と安全性-畑作物で実証試験」
http://www.dairyman.co.jp/new_countries/1335