カテゴリー:実証試験
実施年度:2019~2020年度
実施:旭川支所営農支援室
対象:JAひがしかわ
協力関係機関:上川農業改良普及センター大雪支所、東川町農業振興公社
POINT
●炭酸ガス施用と環境モニタリングシステム活用の可能性検証
この記事は2021年12月1日に掲載された情報となります。
ハウス栽培で関心が高まる技術
近年、道外では、長期間収穫可能な果菜類を中心に、ハウス内の環境測定と炭酸ガス(二酸化炭素)を施用する技術の導入が進みつつあります。
ハウス内環境を把握するためには、環境測定装置による「ハウス内環境の見える化」がその第一歩。最近では、温度・湿度・地温・日射量・炭酸ガス濃度などの測定に加えて、データの蓄積・閲覧が可能なシステムが開発されています。
一方、炭酸ガス施用は、ハウス内の炭酸ガス濃度を高めることで光合成を促進することが収量向上に有効とされています。
道内の施設園芸における事例はまだ少ない状況ですが、当該技術に対する生産現場の関心は高まりつつあります。
実証試験の内容
環境モニタリングシステムは「みどりクラウド®」(写真1)、炭酸ガス発生装置はLPガスを燃料とした「Esc-ProJ」(写真2・3)を使用し、東川町農業振興公社内の新規就農者向けのトマトハウスで実証試験を行いました。
試験は、炭酸ガス施用の効果を評価することを主目的として、炭酸ガス施用ハウスと無施用ハウスを1棟(165坪)ずつ設置して行いました。炭酸ガスの施用は5月中旬〜6月上旬の早朝の2〜3時間とし、「みどりクラウド®」にてハウス内環境データを測定、生育状況の比較を行いました。なお、「みどりクラウド®」は、ハウス内環境データを自動で計測・記録するので、データをパソコンやスマホなどでいつでも確認できます。
炭酸ガス施用の効果を確認
ハウス内の炭酸ガス減少量(「最高濃度」と「ハウス開放直前濃度」の差)の推移を見ると、25日中19日は炭酸ガス無施用区に比べ施用区で炭酸ガスの減少量が多く、炭酸ガスの利用量が多かった可能性を示しています(図1)。実際に炭酸ガス施用区では無施用区に比べてトマトの草勢も強くなる傾向がみられました(写真4)。出荷時の1果重を調査した結果でも、炭酸ガス施用区の方が無施用区に比べて重くなる傾向がみられました(図2)。
しかし、炭酸ガスの施用で収量性の向上を図るためには、施用終了後も病害虫の発生予測を行いながら、草勢を含め、適正な栽培管理が必要と考えられます。
今後の普及に向けて
炭酸ガスの施用技術は、試験研究機関やホクレン長沼研究農場営農技術課でも実証試験を実施しており、連携を図りながら、技術の確立と普及に向けて取り組んでいます。
近年、環境モニタリングシステムが多くのメーカーから販売されています。今後も「ハウス内環境の見える化ツール」の有効性を広く情報発信していきたいと考えています。