スマート農業技術を活用したミニトマトの栽培試験

キーワード:スマート農業環境制御機器

スマート農業技術を活用したミニトマトの栽培試験

ミニトマトの栽培において環境制御機器を導入した実証を行い10a当たり約3t(慣行区対比142%)の増収となりました。

この記事は2022年2月1日に掲載された情報となります。

ホクレン営農支援センター 営農技術課

収量性向上と省力化に向けて

担い手が減少し雇用労働力の確保が難しくなる中、道内の施設園芸農家戸当たりの作付面積は増加しています。今後も生産量を維持するためには、生産性の向上や省力化が必要不可欠。道外における施設園芸を見ると、大型施設を中心に環境制御技術の導入により大幅な収量性向上や省力化が図られています。

このことから、道内の施設園芸で主流となっている小規模なパイプハウスにおいても、環境制御機器を導入することで、収量性向上や省力化ができる可能性があります。

ミニトマト

パイプハウスに環境制御機器を導入

ホクレン営農支援センター営農技術課では、2020年度に一般的なパイプハウスに実装可能な環境制御機器を導入し、3カ年にわたりミニトマト栽培の収量性向上と省力化を目的とした栽培実証を行っています。

一般的なパイプハウスに実装可能な環境制御機器を導入

慣行区と比較し10a当たり約3tの増収

環境制御機器(写真1)でコントロールするのは、暖房機、側窓や遮光カーテンの開閉(写真2・3)、炭酸ガスの施用です。暖房の使用や側窓の時間別の開閉条件を設定し、遮光カーテンを高温時に広げるなど、ハウス内の栽培適温維持を図りました。また、ハウス内の炭酸ガス濃度を大気並みに維持するため炭酸ガスを低濃度施用しました。なお、暖房機を設置せず、遮光カーテンも強日射時のみとした制御区2を設けました(表1)。

これらの実証試験の結果、制御区1の収量は、可販果規格で10a当たり10・2‌tとなり、慣行区と比較し約3‌t(慣行区対比142%)の増収となりました(表2)。

その要因は、①春先と秋口における温度管理と秋期の作期延長、②側窓の自動開閉による生育の確保、③炭酸ガスの施用による果実肥大の促進、④30%遮光カーテンによる高温障害対策(7月中旬〜8月上旬の高温時間に実施)と考えられました。また、環境制御機器導入分を加味した経済性においても、制御区1では慣行区と比較し10a当たり約10万円の収益改善につながりました。

次年度も実証を継続し収量性向上と省力効果に関わるデータ収集並びに経済性の評価を行っていく予定です。

複合環境制御器
写真1.複合環境制御器
側窓開閉
写真2.側窓開閉
30%遮光カーテン
写真3. 30%遮光カーテン

試験内容

●場所:ホクレン長沼研究農場ハウス(間口5.4m×30m)3棟
●品種:ミニトマト「キャロル10」
●作型:半促成長期どり
●定植:2021年4月26〜27日
●栽培方法:隔離床養液栽培(ヤシガラ培地)
●栽植密度:1本仕立て、2条2列植、株間33㎝、条間30㎝、2,220株/10a
●ハウス別環境制御内容:3試験区(表1)

試験区別環境制御内容の概要
表1.試験区別環境制御内容の概要

環境制御がミニトマトの収量に及ぼす影響
表2.環境制御がミニトマトの収量に及ぼす影響
※収穫期間:制御区1…6/14〜11/25、制御区2・慣行区…6/14〜10/25
※規格:2S…10g未満、S…10g~15g未満、M…15g~20g未満、L…20g~25g未満、2L…25g以上