この記事は2023年10月1日に掲載された情報となります。
札幌花き園芸株式会社
営業部 次長 若松 晃士さん
コロナ禍で需要が減少した花き業界。セレモニーやイベントが再開されるようになり、取り扱いはどのように変化したのでしょうか。切り花専門の花き卸売市場「札幌花き園芸株式会社」の若松さんにお聞きました。
コロナ禍による需要の変化
新型コロナウイルスの影響で、結婚式は自粛、葬儀は直葬や家族葬、自宅葬が増え、祭壇が小さくなり供花が減少することで生花の需要は大きく減りました。道内の花き市場の5割以上を取り扱う札幌花き園芸株式会社営業部次長の若松晃士さんは、コロナ禍による変化を次のように説明します。
「葬儀や婚礼の業務需要は減りましたが、一方で母の日や誕生日などのギフト需要は増えました。ステイホームの影響もあってホームユースの売り上げも伸びたようです」
昨年から今年にかけては、これまで延期していた結婚式や披露宴を行う人が集中、逆に需要が増大した一面もあったといいます。また、ネットで注文を受ける生花店や、定期的にお花を届けるサブスクリプションなど新しい販売形態も増加。長期的に見ると、花き市場においてコロナの影響は新たな市場開拓につながったようです。
移り変わる花きのトレンド
一方で、小売店や消費者が求める花は、どんどん変化しています。
「以前なら葬儀は白い菊やで祭壇を飾るのが一般的でしたが、今は故人の好きな花や色で自由に選ぶようになりました。昔はトゲのあるバラは飾りませんでしたが、そういったタブーもないようです。菊でも、1輪菊ではなく、1本の枝にいくつも花がつくスプレーマムや、まん丸の花を咲かせるポンポンマム、ダリアのようなものなど、変わった花型のものが出回るようになってきました」
では、ファッションのように花の色にも流行はあるのでしょうか。
「ニュアンスカラーと呼ばれる中間色が売れています。スターチスは紫や白が定番で仏花のイメージが強いですが、ニュアンスカラーの登場でウエディングにも使われるようになりました」
色や形が変わると、使用シーンも広がることがあると若松さんはいいます。
「ブーケに花だけではなくグリーンが組み込まれるようになり、枝ものや葉もののニーズが増えています。ユーカリなどはドライフラワーにも向いているので、特に人気がありますね」
市場が求める花とは
若松さんは卸売市場が求める花の規格も変わってきたといいます。
「従来は2Lサイズ(70〜80cm)が求められてきましたが、テーブルフラワーなら丈が30cmで十分。規格外ではじかれていたものも買い手がつくようになっているので、市場ごとの需要に応じて出荷してほしいですね」
関西の仏花はむしろ丈の短いサイズが好まれるなど、地域によってもニーズの違いがあるようです。
「例えば北海道ではずいぶん前からお盆の時期の仏花にヒマワリが使われていましたが、私がヒマワリを担当していた15年前だと関東・関西では需要が無かった。それが今はお盆の仏花として全国的に引き合いが多い。北海道から広まって需要が爆発的に伸びました」
いま心配しているのは、気候変動による出荷時期の変化です。8月のお盆向けの花が暑さのせいで7月下旬に出荷となってしまい、需要期に品薄になってしまうケースもあります。全国の産地からのお花が一斉に出荷され、飽和状態になると、価格が維持できない場合もあるといいます。
北海道の花きの強み
若松さんによると、注目の品目はラナンキュラスやアルストロメリアなど。寒さに強く北海道での栽培に向いているそうです。
「ラナンキュラスはカラーバリエーションが豊富で、花型も丸咲きのカップのようなものから八重咲きのものまでさまざまです。見た目の違いだけではなく、例えばフリージアなんかだと、香りの強い品種なども出てきて話題を呼んでいます。農家さんはこれまでと同じものがつくりやすいのは分かるのですが、できれば新しい品種に積極的に挑戦してもらえたらうれしいですね」と若松さん。花の色やかたち、香りなどの違いが、新しい需要の掘り起しにつながることもあるといいます。
若松さんは北海道の花を「寒い時期に苗を植え、じっくり育てているので、軸がしっかりしていて花持ちがいい」と評価。将来的には海外への輸出の可能性もあると考えています。