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厳寒地における冬の野菜づくり

キーワード:冬野菜

厳寒地における冬の野菜づくり

 

この記事は2019年8月1日に掲載された情報となります。

 

ホクレン 訓子府実証農場 農産技術課
係長 出原 慧さん

 

POINT!
●保温設備設置で、無加温のビニールハウスでも冬野菜づくりができます。
●厳寒地での冬野菜づくりのポイントをまとめました。

 

ビニールハウスを活用し、道内産が少ない冬期間に野菜を出荷する試みが始まっています。所得向上や雇用創出につながると注目され、ホクレン訓子府実証農場でも2017年から試験に取り組んでいます。厳寒地の冬野菜づくりを紹介します。

 

冬野菜の栽培に必要な設備

北海道でビニールハウスを使い冬野菜をつくるには、地域によって異なりますが、オホーツク地域のような厳寒地では、保温のため天井ビニールを二重張りにし、間に空気を送り込む「空気膜フィルム」という設備が必要です。そして、その内側に内張りカーテンとトンネルを設置。4重の被覆をして栽培します(図1)。

 

図1.冬野菜づくりに必要なビニールハウス設備
図1.冬野菜づくりに必要なビニールハウス設備

 

なお、こうした設備でも無加温の場合、冬は寒さで生育が止まるので、晩秋までに収穫サイズに生育させることが重要となります。

 

「リーフレタス」と「こまつな」で試験を実施

訓子府実証農場では、2017年にリーフレタスとこまつなを無加温で栽培し、収穫時期や収量などを調査しました(表1、写真1)。

 

表1.試験内容
表1.試験内容

 

写真1.冬野菜づくりの様子と栽培したハウス

写真1.冬野菜づくりの様子と栽培したハウス
写真1.冬野菜づくりの様子と栽培したハウス

 

また、出荷期間の延長を狙い、トンネル内の最低気温を3℃に維持する加温機を用い、無加温栽培より遅い時期に植え付けて比較しました。

無加温栽培では、10月に植え付けた場合、こまつなは11月、リーフレタスは12月に収穫時期を迎えました。しかし、リーフレタスはこまつなほど寒さに強くなく、株重量が小さかったことから、9月下旬までに苗を定植し生育を確保することが必要と考えられました。

加温栽培では、11月に植え付けを行い、2月に収穫を迎えました。費用(燃料代)を踏まえた検討が必要ですが、無加温栽培との組み合わせで、11月から2月まで野菜出荷が期待できる結果となりました(表2)。

 

表2.無加温栽培と加温栽培の試験結果
表2.無加温栽培と加温栽培の試験結果
※無加温栽培は10/6、加温栽培は11/10に植え付け

 

地場産の冬野菜を求める声

冬野菜の需要を知るため、オホーツク管内のAコープでリーフレタスとこまつなの試験販売(写真2)と消費者へのアンケート調査を行いました。

 

写真2.店舗に陳列された野菜
写真2.店舗に陳列された野菜(上:リーフレタス 下:こまつな)

 

商品は完売し、「冬も地元の青物野菜を食べたい」、「地場産は鮮度が高い」という声が多く、冬の地場産野菜の需要の高さがうかがえました。

試験結果を踏まえ、無加温栽培での冬野菜づくりのポイントをまとめました(表3)。

 

表3.冬野菜づくりのポイント(無加温栽培)
表3.冬野菜づくりのポイント(無加温栽培)

 

当農場では、今後も冬野菜の栽培試験や展示を実施します。興味のある方はご連絡ください。