この記事は2017年8月1日に掲載された情報となります。
道総研 花・野菜技術センター研究部 生産環境グループ 研究主査
白井 佳代さん
Profile:帯広畜産大学卒業。中央農業試験場、北見農業試験場で、水稲、ばれいしょ、タマネギなどの病害試験を担当し、平成25年から花・野菜技術センターに勤務。
1.斑点病
葉、茎、果実のヘタに、褐色の小斑点が出ます(写真1)。多発すると葉が早くに枯死してしまいます。
品種による発病差が大きく、主要品種では「キャロル10」と「ラブリー藍」で多発が問題となりますが、「キャロル7」、「キャロルパッション」、「キャロルスター」、「SC6-008」、「CF千果」、「アイコ」では問題になりません。
発生時期は、道内で主要な半促成長期どり~ハウス夏秋どり作型で6月下旬以降です。ただし、初期のわずかな病斑を見つけるのは難しく、実際に発病に気づくのは、ある程度病斑が増えた後の7月中旬以降の場合が多いようです。発病は多湿条件で増えやすく、降雨が多い時などは要注意です。
防除は、発病が増える前の7月上旬に開始し、特に多湿時には散布間隔を空けすぎないことが大切です。
薬剤は表1に示した5剤が有効です。
ただし、TPN水和剤Fとイプロジオン水和剤は、わずかですが果実の汚れを生じる場合があります。
2.葉かび病
主な防除対策は、抵抗性品種(「キャロル10」や「SC6-008」など葉かび病抵抗性遺伝子Cf-9を持つ品種)の栽培ですが、2009年には抵抗性品種を発病させる葉かび病菌のレース※が一部地域で確認されています。
※レース… 菌の種類も形態も同じだが、「植物の品種によって発病するかしないか」だけが異なる菌の系統のこと。
2014~15年に石狩・空知・後志・上川・留萌・日高管内のべ9市町で調査をしたところ、すべての市町で抵抗性品種にも発病する葉かび病菌のレースが確認されました。
抵抗性品種が効果を発揮している場面は多いですが、油断はできない状況と考えられます。レースが変化しても薬剤の効果は変わりません。抵抗性品種の栽培でもハウス内をよく観察し、初期防除のタイミングを逃さないことが大切です。
3.すすかび病
2012年に道内で初めて発生した病害です。症状は葉かび病とそっくりで、肉眼では区別がつきません(写真2)。
ただし胞子の形は全く違うため、顕微鏡では簡単に見分けられます(写真3)。抵抗性の品種は確認されていません。
発生時期は早く、定植2週間後に病斑が確認された事例があります。前年に多発したハウスは翌年も発生しやすいため、発生ハウスでは予防的に散布した方が良いと考えられます。
防除薬剤は、TPN水和剤F(商品名:ダコニール1000)、ピラクロストロビン・ボスカリド水和剤DF( 商品名:シグナムWDG)は有効で、ペンチオピラド水和剤F(商品名:アフェットフロアブル)は効果が低い事例がありました。
葉かび病と混発することもありますが、薬剤の効果は両者で異なる場合があるので、薬剤の選択には注意が必要です。現在の発生地域は上川と空知管内の一部だけですが、今後の発生拡大が懸念されます。