てん菜褐斑病に効果の高い「ムケツDX」、馬鈴しょや野菜類の軟腐病や、ブロッコリーの花蕾腐敗病などに有効な「マスタピース水和剤」をご紹介します。
この記事は2023年12月15日に掲載された情報となります。
ホクレン肥料農薬部 技術普及課
薬剤①ムケツDX
ムケツDXはホクサン株式会社が取り扱う、てん菜褐斑病の新規防除薬剤です。新しい有効成分であるメチルテトラプロールと、グリーンペンコゼブ水和剤に含まれるマンゼブの二つの成分による製品です。
メチルテトラプロールは薬剤の系統としてQoI剤※の分類ですが、構造が異なるためQoI剤のFRACコード(農薬の作用機構分類)「11」に対し「11A」と区分され、従来のQoI剤の耐性菌に対しても有効です。
予防的な使用での効果が期待されますが、残効性、耐雨性についても優れた特徴を持つと考えられます。
2022年にホクレン農業総合研究所 長沼研究農場で試験を実施しました(図1)。最終散布の9日後の調査ではグリーンペンコゼブの400倍に対しムケツDXの500倍、グリーンペンコゼブの500倍に対しムケツの800倍は優れた防除効果を示しました。
また最終散布の19日後の調査でも同様の傾向を示すことからも、残効面でも優れていると考えられます。
ムケツDXはグリーンペンコゼブと比較し安定した高い効果が期待でき、体系初期の予防的な防除での使用が適切と考えられます。
※ストロビルリン系剤に属し糸状菌の細胞の中にあるミトコンドリアに作用して殺菌効果を発揮
※農薬の使用に当たってはラベルを確認のうえご使用ください
薬剤②マスタピース水和剤
マスタピース水和剤はホクサン株式会社の取り扱うシュードモナス ロデシア HAI−0804株を有効成分とする微生物薬剤です。
植物体の表面にバイオフィルム(細菌が生成する代謝物による膜)を形成し、ほかの病原細菌の侵入を防ぐ作用があると考えられています。
馬鈴しょ、野菜類の軟腐病、ブロッコリーの花蕾腐敗病などに効果があります(登録作物・病害については製品情報から参照ください)。
また、農薬使用の回数にカウントされないため使用回数の制限がなく、収穫前日まで使用することができます。作物に対する汚れが少ない点もメリットです。
なお、馬鈴しょの軟腐病に対しては、1000倍の使用で公的試験での高い効果が確認され、北海道の指導参考を取得しています。
従来の微生物農薬と比較しても同等以上の効果があると考えられ、軟腐病ほか各種病害の防除対策として活用できます。